機械的正義 Ｊ ページ6
ＰＰＰＰＰＰ…
『こちら本部、ｂｏｘ２９から３３に待機中の捜査官に告ぐ。
ｂｏｘ３１にて警告灯が点滅。 昨晩Ａ店の強盗犯と生体認証で一致。
ただちに発見・確保せよ』
世の中から犯罪が無くならないとすれば、それを取り締まるものも無くならない。
正義こそが永遠である。
幼い頃から、俺はその《正義》ってやつになりたかった。
「潤、今の聞こえてた？ パイロットだと潤が一番近いよね？」
「はい。 ただいまｂｏｘ３０上空を飛行中です、俺向かいます」
「了解、じゃあよろしく！ 俺は別件でこのまま３４に向かうんで。
ちなみに一応聞くけど、応援はどうする？」
「了解しました。 いや、要らないっすね」
「さっすが。 んじゃ、気を付けて！」
「ええ、相葉さんも」
周りの子供たちは数年もすれば別の夢を語った。
幼い頃の夢を思い描き続けた俺のような奴は、実に少数派だった。
「本部、こちら松本。 ３０から３１に向かいます」
夢を叶えてみてどうか。
この話をすると必ずと言っていいほど聞かれることだ。
「本部聞こえますか。 たった今ｂｏｘ３０を通過、３１に入ります」
そうコールした直後、ある一角で上空から警告灯が点滅しているのが確認できた。
点滅している箇所をよく見ると、明らかに不審な動きをしている人物がいる。
機内に搭載した遠隔用生体認証システムでその人物に照準を合わせる。
− 一致率は９３.６％です −
「点滅付近に不審な人物を確認。 このまま３１−２を封鎖して、上空から照準を合わせます」
「こちら本部。 了解、頼んだぞ」
「はい」
本部の応答とともに手元を操作して、俺はｂｏｘ３１のgate２の制御システムを解除した。
地上ではサイレンが鳴り、ゲートが現れて道が封鎖されていく。
警告灯が点滅している時から騒がしかった人の波は、我先にと退いていく。
強盗犯もそれに気が付いたのだろう。
慌てた様子で引き返そうとするのが見えた。
窓から顔を出した俺は、銃を構えて照準を合わせる。
罪のない一般人を傷つけないよう、細心の注意を払って。
「悪いな、もうあと一歩遅かったよ」
リミッターを外すのと同時、それは音も立てずに命中した。
犯人は、許しを請うように俺を見ていた。
「…こちら松本、無事命中しました。 すぐに署まで連行します。」
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作者名：凛南＊* | 作成日時：2017年5月30日 21時
