やりきれない気持ち ページ48
ついに職場体験当日。私たちは駅にいた。
｢コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ｣
｢はーい！！｣
｢伸ばすな『はい』だ芦戸。くれぐれも失礼のないように！じゃあ行け｣
皆がぞろぞろと動き出す中、デクと麗日さんが飯田くんのところに行くのが遠目に見えた。
｢飯田くん......本当にどうしようもなくなったら言ってね。友達だろ｣
｢...あぁ｣
飯田くんは一言だけ言うと行ってしまったようだ。
確か、飯田くんのお兄さんのインゲニウム。ヒーロー殺しステインに殺られたとニュースで言ってた。詳しいことは飯田くんしゃべんないから分かんないけど...
私は何だか、飯田くんの後ろ姿を見て、やりきれない気持ちが芽生えた。
｢げっ、時間やば......行くか｣
本当はデクと話したかったけど、新幹線の時刻ギリギリまで迫っていたので、私は目的の場所に向かう為に駆け足でホームに向かった。
でもやっぱ、一週間もデクに会えないのは少し寂しいな...
メールくらいは、いいよね。
約一時間後。目的のヒーロー事務所近くの駅に到着。
駅を出ると、見知った姿があった。
｢あ...｣
｢お...A｣
｢と、轟くん...やっほ｣
そこには轟くんがいた。
｢Aもこの近くのヒーロー事務所か？｣
｢あ、うん。まさか轟くんに会うとは...｣
......。
静かな沈黙が流れる。
え、コレどうすればいいの？
私自分から話かけるタイプでもないし、体育祭での会話で結構私余計なことしゃべったから気まづいんだけど...
｢...A、行く方向どっちだ？｣
｢へ？あ、あぁ...こっちの角を右に行くけど｣
また静かな時間が流れ出す。
ちょっと、まじでコレどうすればいいの？？
行っていい？
行って良いよね？？
デク助けて...
｢行くぞ｣
｢んん？って、ちょ...｣
轟くんがしゃべってくれたと思ったら、急に私の手首を掴んで歩き出す。
｢え？？あの、轟くん？どういう...｣
｢...俺も同じ方向だから、途中まで一緒に行きたい。駄目か？｣
そう言って首を傾げる轟くん。
いや君、自分がイケメンだって分かってる？？
正直言って破壊力がヤバいんだよ...
まぁ、別に同じ方向なら断る理由もないので、顔を下に伏せながら、小さくも届く声で｢いいよ｣と言った。
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作者名：夢桜 | 作成日時：2019年3月20日 20時
