どっちも天然 ページ49
私は今、轟くんに手首を掴まれたまま一緒に歩いている。
待って、なんかおかしい。
｢と、轟くん？自分で歩けるからその...手離してもらえるかな？｣
｢...？俺はAと一緒に歩きたい｣
...この人今なんて言った？
私じゃなかったら一発で女子が落ちそうなセリフ言ったぞ。
さては轟くん...天然なのか？←
真っ直ぐな目で見られて思わず恥ずかしくなる。
デク、私を天然だとよく言うけど本物はこっちだと思う。
私と手なんか繋いで何がしたいんだか...
いや、手首掴んでるだけだから繋いではいないのか？？
｢いや、その...私、デクと付き合ってるし、なるべく男子とこういうのは...｣
あー！もう！なんで私ってこう言葉にするのが苦手なの。もっとはっきり言え私！！
｢Aは、本当に緑谷が大事なんだな｣
｢うん？？｣
急にどうした轟くん。話がかみ合ってるようでかみ合ってない。
何故そこでシュンとした顔をするの！
｢...分かった。じゃあ、あと少しだけこのままにさせてくれ｣
そう言うと前を向いて歩きだす轟くん。
え？いや話聞いてた？絶対分かってないよね！？
このままじゃ困るんだよ！さっきからチラチラこっちを見る視線が痛くて結構精神にきてるんだよ？
そうツッコもうとすると、轟くんが｢駄目か？｣目で訴えてくる。
そんな捨てられた子犬みたいな目を私に向けないでよ！！
違う女子にやって！？一発で彼女できるから！←
そんな葛藤が心の内にあったが、ついに私は根負けした。
デクごめん、他意はないからどうか許して。
｢はぁ...分かったから。本当に少しだけだからね？？｣
｢...！ありがとう｣
彼は微笑んだ。それに私はピシッ...と固まる。
｢どうした？｣
｢いや...人のこと言えないのは分かってるけど、轟くんってそんな風に笑えるんだなと思って｣
｢...そうだな。Aと一緒だからか、いつもより楽しいとは思ってる｣
...！？この発言はちょっとヤバい。
轟くん、それは私じゃなくて違う女子に言ってあげて？喜ぶよきっと←
｢この天然が｣ ボソッ
｢...？Aの方が天然だと思うぞ？｣
そんな会話をしつつも、10分ほど歩くと目的の場所が見えてきた。
私がこの辺だと言うと、轟くんもこの辺りだと言う。
...ん？
そして目的の事務所の前に到着。
まさか...と、轟くんと顔を見合わせる。
｢轟くんもエンデヴァーの事務所？｣
｢"も"ってことはAもなのか？｣
私はこの天然とまだ共にするのかと頭を抱えた。
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作者名：夢桜 | 作成日時：2019年3月20日 20時
