お願い ページ35
リカバリーガールに感覚を回復させてもらったあと、私は静かに、通路の横の壁に背中を預けてたたずんでいた。
予想通り、聴覚と味覚が衰退していたらしい。
リカバリーガールのところに行ったら、
｢自分でちゃんと"個性"の限界を見極めなさい！！｣
と、怒られてしまった。
かっちゃん、怒ってたなぁ。
何言ってたのか全然分かんなかったけど。
急に爆破してくるからビビった。音無くてもビビるもんなんだな。
いや、何より怖かったのはあの顔か。←
イケメンが台無しになっていた。今度それとなく注意してあげよ。
｢万能？｣
私はハッとして顔をあげた。そこにいたのは、
｢...轟くん。やっほ｣
試合が始まる前に、彼に言いたいことがあってここで待っていた。
｢何でここにいるんだ？てか、感覚の方は大丈夫なのか？｣
｢あ、うん。ちゃんと治ったよ。ばっちり聞こえてる。ご心配ありがと。
...えっとね、轟くんにはちょっと、お願いがあって待ってたの｣
｢お願い？｣
そう言って首をかしげる轟くん。絵になるなぁ。
轟くんもイケメンだな、やっぱ。
真のイケメンというのはこういうことなんだぜ？かっちゃん。←
ま、私はデク一筋ですけどね。
｢そ。...かっちゃんと、全力で戦ってくれないかな？その、左を使って｣
すると、轟くんがピクッと反応した。そしてあからさまに顔を険しくする。
｢どういう意味だ｣
｢君が、どうして左を使いたがらないのかは知ってる。
けど私は、かっちゃんと向き合って戦ってあげられなかった。
これは、私のわがままでエゴだって分かってる。だけどどうか、轟くんにまで、同じことをしてほしくない｣
｢それは...てか、何で知って...｣
｢ご、ごめん。デクとの会話聞いちゃって...それでね、思ったんだ。轟くんと私、ちょっと似てるなって｣
｢...！まさか、個性婚...｣
｢いや、違うよ。でも...そうだね。出生の仕方はある意味
私は頬をかきながら答える。
｢どういうことだ？｣
｢アハハ...えっと、ごめん。それは言えない。今のは忘れて｣
そう言って、私は苦笑いを浮かべた。
｢そうだな...まー、それ以外のことなら。
......これから話すことは、轟くんのことを信用して君にしか話さないつもりだから、他言無用でお願い出来るかな？
特にデクとかっちゃん。この二人には、絶対に言わないで。｣
私は轟くんの目を見て、強く言った。
轟くんが｢...分かった｣と言って頷くのを見て、私は口を開いた。
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作者名：夢桜 | 作成日時：2019年3月20日 20時
