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『…風邪です』
面倒なので、初対面の人にはそう答えている。
JK「…ふーん?」
『あの、手…』
JK「風邪なら、会社来ない方がいいんじゃないですか?コロナって疑われない?」
なんだなんだ、随分ぐいぐい来るな、この人。
このご時世だから、私の声がコレだから、もしコロナだったら怖いとか?
なら、近付かなきゃいいのに。
『…咳も、熱も、ないので…』
とりあえず風邪ということにならないかな、と思いながら答えたけど、納得していない様子だった。
TH「グク?何つっかかってんの?俺が迷惑かけちゃんたんだから、これ以上面倒起こすなよ」
ジョングクさんはテヒョンさんと周りを見て、それから、はーっとため息を吐いた。
あ、
そのやれやれ感すごい伝わる、
癖のあるため息、
どこかで。
ぶわ、と鳥肌がたった。
逃げたい。
今すぐ。
これやばい。
これは、私、
これ以上ここにいちゃいけない。
目が泳ぎそうになるのを必死で堪えて、ジョングクさんが手を離してくれるのをじっと待つ。
TH「お前が掴んでるから困ってるだろ。これ、直さないと撮影できないって…グク?」
JK「…あなた、俺のこと、知ってますか?」
…知ってる。
体の、奥の、
ものすごく深いところで良く知ってると思う。
私がそれを知っていることを、
ジョングクさんには、
絶対、知られたくない。
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作者名:フネ55 | 作成日時:2022年12月7日 14時