突撃 side総悟 ページ36
【総悟side】
――――――
――それは、とある非番のある日のこと。いつも非番といえば街をぶらついたり撮り溜めたドラマを消費したりと多忙を極めている俺だが、今日に限ってはとある目的があり。…それというのも。
「――…ここか」
目の前のこじんまりとした店を見上げて呟いた。先日久しぶりに顔を合わせた姉へ今度はこっちが突撃してやろうという魂胆である。
姉ちゃんが屯所へ突撃してきたのはつい二週間ほど前のことだ。よりによって今まで散々からかい尽くしてきた相手に不意打ちをいくつか食らわされて中々に悔しかったあの出来事は鮮明に俺の頭に焼き付いており。
(…普通、相談もなしに江戸に出てくるかねェ。)
まァあの人は昔から突拍子がなかった。そこに天然で姉上がのっちまい…なんてこともしばしばだった。つまり今更ということだろう。
先日を思い出し湧き上がってきたため息を吐き出しながら再び目の前の店を見上げる。――和菓子屋、っつったか。
さてあの頼りねェ姉がお江戸の真ん中できちんと働けてんのか、と少し口元を緩めつつ、俺は暖簾をくぐったのである。
*
「――いらっしゃいませ!」
――と、店内へ一歩踏み込むと同時に投げかけられた声。それは聞き覚えのあるものであったが、しかし。
「Aちゃん、いちご大福ひとつ!」
「こっちぜんざいで!」
「はい、只今!」
……もしや午前中布団の中でごろごろとしていたのが間違いだったか、昼下がりの和菓子屋というのはそれなりに賑わっているようだった。きびきびと働く見慣れた姿に俺へ気づいた様子はない。
忙しそうに厨房の方へ駆け込んでいったその背中に店が落ち着くまで一旦待つかと手近な空席に腰掛け、頬杖の上で店内を見回す。…が。
(――いやはや、こりゃァ。)
さして広くもない店内に数個並べられた机や椅子。そこへ腰掛ける一見普通の客たち。……しかしよく見るとどうにも………顔が緩みきっており。
少し耳を澄ませてみれば「いやー、じいさんも良い子雇ったよなァ」「ほんっと。甘いもの控えてたってェのにおじゃんだこりゃ」などという会話が聞こえ、疑惑が確信に近づいた。
つまり、一ヶ月と少しの間に看板娘にまで成り上がったということか。
家族の容姿というのは把握しづらいものだが、周囲の反応から自分や姉がそれなりの容姿であることは理解している。それを考えりゃ不思議ではねェが、…溶け込み早ェ、と少し笑いが漏れた。
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中村(平日浮上なし)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!お陰様で一巻完結とさせていただきましたヽ(*´∀`)ノ亀更新にお付き合い頂きありがとうございます!!嬉しいお言葉も沢山頂けて嬉しい限りです…!! 次巻では多少進展させられると思うので…よかったらまたよろしくお願いします!(^^ (2017年2月11日 21時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - お疲れさまでした!次巻も拝見させて頂きます! (2017年2月11日 20時) (レス) id: 20b4c6b7f5 (このIDを非表示/違反報告)
主任(プロフ) - 中村さんの作品いつも楽しみに見させていただいております(^_^)今回も最高でございます…また生きる糧を頂戴致します(^_^) (2017年2月11日 19時) (レス) id: 55077c071d (このIDを非表示/違反報告)
唯月 - 凄く面白いです!更新は大変だと思いますが、これからも頑張って下さい!応援しています! (2017年1月28日 22時) (レス) id: 9cd5d172ad (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 私も田舎の方に住んでるので何かと共感できる部分が多くて嬉しいですw銀さんが用心棒……心強いですね。これからの展開が楽しみです。 (2017年1月28日 22時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2017年1月4日 20時