【銀魂】狭い世間の真ん中で【坂田銀時】

逃し続けたタイミング ページ22

「――あぁぁ、それは、」



「バカだろお前バカだろ」額に手を当てた銀さんが小声で言う。そんなこと言ったって咄嗟に裏声になってしまったんだ、仕方ない。

テンパりを最高潮に達させながら打開策はないかと探すも――断念。どうにも見つからなくて、……仕方なく私は腹を決めた。



(……まぁでもいずれ行かなきゃとは思ってたし、)



逃し続けてきたタイミングだろう、これがきっと。私はゆっくりゆっくり体を後ろへ向け。




「……裏声は、つい」


「――んな、」


「…………お久しぶりですご無沙汰してます」




――一時この騒がしい路上が、沈黙で包まれた。恐る恐る見上げたその人は間の抜けた顔をしていて、…これは混乱させてしまったかと内心苦笑する。


土方さんは私の身近にいた人のひとりであった。総悟被害者の会の仲間も兼ねていて…、それなりに友好な関係は築けていたと思う。例えるならば兄妹のような。


しかしいくら友好な相手だと言ったってこの場では混乱しか生まない。次どうすればいいのかを見失ってあたふたする。

広いように見えるこの大都会も、偶然昔馴染みに出くわしてしまうくらいには狭いものなのだな、そんな風に頭のどこかで冷静に考えていれば「………お前、Aか？」と目の前のその人の声。



「どうしてそんなに怪しんでるんですか、正真正銘私ですよ。いつぶりですかね？」

「………いつぶりも何もお前なんでここに…、っつーかどうして万事屋と？」

「…あ、えっと、とりあえずナンパとかではなくて……お江戸に出てきてから知り合いになったんです」



今日もナンパどころか助けてもらってて、と付け足せば「だから言っただろーがマヨ方くんよォ」なんて銀さんがドヤ顔をした。土方さんの額に青筋が浮かんでしまうから控えてもらいたいものである。

どうにか銀さんへのいらつきを飲み込んだらしき土方さんは「…総悟に会いに来たのか」と。……あぁ、とうとうそこへ突っ込まれてしまった。


私は土方さんから静かに目をそらし。



「…………会いに来たというか来ていないというか会えないというか」

「はァ？総悟が目当てじゃねェのか。んじゃどうしてこんなとこに」

「……一言で言うと暮らしてます」
「は？」


「和菓子屋で働きながら暮らしてるなうです」



――はァァァア!!?と響いた声に昔の出来事がいくつか重なった。その人が取り乱すのなんていつぶりに見るだろうか……そんな現実逃避は一旦頭の隅に追いやって。

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