【銀魂】パワー・ハラスメント【山崎退】

淡々と ページ44

「…すみません、あんな大口叩いたくせにあんまり役に立てなくて」



――と、謝罪を一言。それはいとも簡単に私の眉間に皺を刻んだ。……なんだすみませんって。なめてんのか喧嘩売ってんのかどっちだ。

私はきっとむすっとしているだろう口を開いた。山崎の方へは視線を向けぬまま声を発する。



「……いい」

「え？」



発したそれを聞き返されてまた機嫌が悪くなった。…わかれよ、コノヤロー。

わざと、淡々としている風を装って。



「山崎が来てくれなかったら私は折れてた。…あんたが来てくれたことに意味が有る」



――あんたが来てくれたから、いい。

私の言葉を聞いたそいつが何を思ったのか、それは定かじゃないけれど。



「……そうですか」



返ってきた声が柔らかかったことだけは、確かだ。――そして、それと同時にあたりが騒がしくなりだす。どうにも真選組が到着したようで。



よっこらせ、なんてその場に立ち上がり声の方向へ目をやっていると。






「―――A！」


「……土方さん」



早足で最初に飛び込んできたのは土方さんだった。しかしその目がつり上がっているのを見て思わず後ずさる。やっぱりアレか！独断行動は叱りの対象か！と冷や汗をかいていたら。



「お前はバカか！組織は団体行動が基本だろーが!!もし何かあったらどうなると思ってる！」



案の定降ってきた、叱りの言葉。顔を引きつらせて「スミマセン」と紡げば「あァ!?」とかなんとか。いや謝ってるから私ィ！

「100歩譲っても一人は連れてけ！」やら「どうにかなったらどうするつもりだった！」やら、いつものサボりを叱られる時とは比べ物にならないほどの怒号に圧倒されて数十秒、漸く気が済んだらしき土方さんがため息混じりで口を閉じた。



その人が煙草に火をつけ、白が廃旅館に上がる。それをただただ見つめていれば「まァ、」と。




「……叱るところだらけだが――よくやった。真選組がこんだけかけても捕まえられなかった獲物だ、よくひとりで片付けた。手柄は認める。…あと悪かったな」


「…はい？」


「山崎から聞いた。ここのところずっと調べ物につきっきりだったんだろ。他の奴に頼れと言いてェところだが、……褒めるべきは褒めておく」


「……土方さん…」




土方さんには珍しい褒め殺しに――思わず。思わず、少しだけ。




「………土方さんも薬買いましたか？」

「誰が正気じゃねェと？」




薬やったのかと疑った。不可抗力である。

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