うたた寝 ページ35
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「――ょう、…い…ちょう、――副隊長!大丈夫ですか?」
――ハッ、と。一気に覚醒した意識、明るくなる視界。私の顔を覗き込む山崎。周りには書類の山。……ため息混じりで状況を把握した。どうにも私はうたた寝をしてしまっていたらしい。
頼んだとおり昼飯を持ってきてくれた山崎からビニール袋を受け取り、お礼を言う。欠伸混じりにその中身を取り出そうとしたらなにやら厳しい顔をしたそいつに止められてしまった。
「なんだよバカヤロー、反抗期か」
「違いますよ。…それより副隊長、寝てますかアンタ」
「寝てる寝てる。毎日ぐっすりたっぷり」
なに食わぬ顔で言ったのだけれども効果はないようだった。「騙されませんよ俺は」と真顔を貫く山崎。見透かしているならば聞くなという話である。
ぶちんと不機嫌な顔をしてそいつを見上げていればどこか言いにくそうに山崎は口を開き。
「――この前、どこ行ってたんですか」
そんな問いを、放った。
「この前?いつだかわかんないなだめだこりゃ」
「とぼけないでください一昨々日です」
どうにも悪足掻きは効かないらしいその様子に舌打ちが漏れる。――一昨々日、というのはまさに私が港へ行ったその日のことであった。
……あの日、怪しさ満天な取引を目撃した私は取引のあと傷の男をつけたのである。そうして、ようやく。ようやっとその本拠地を突き止めたのだ。…が。
その本拠地というのが廃旅館というお手軽なものなのである。それこそ少しでも情報が漏れればすぐに場所を変えられる程度の。だから私は未だ土方さんにこのことを報告していないというわけ。
今はともかくあの志戸田という男の正体を突き止めなければならない。報告やら突撃やらは奴の正体と攘夷浪士グループとの関係を突き止めてからだ。それまでは下手に動くと状況が悪化する恐れがある。
――そんなこんなで、私はここのところ連日連夜書庫で調べ物をしているのだけれども。
(“この前何してたか”とか。)
答えられるわけ、ないじゃんよ。
山崎からひったくったビニール袋を握り締めて、そいつを部屋から蹴り出した。廊下と部屋を仕切るように襖を閉める。そして。
――ここ最近のいつも通り。一人だけになったこのかび臭い部屋で、私はまた書類と向き合うなんて苦行を始めたのであった。
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朝 - お疲れ様です。やっぱり素敵です。(^O^) (2019年11月1日 18時) (携帯から) (レス) id: 6f8b22e690 (このIDを非表示/違反報告)
1の次は2 - その次は3なのだ (2019年3月11日 16時) (レス) id: 0f19eb4563 (このIDを非表示/違反報告)
ハーレクイン(プロフ) - 山崎がかっこいい…中村さん流石です…!…そんな作者様になら!きっと坂本辰馬も書けると思います!(必死)お願いしますうううう坂本さんマイナーなんですよおおお日替わりしかないんですよおおおお……検討よろしくお願い致します。応援しています! (2018年9月5日 0時) (レス) id: b56fa1b191 (このIDを非表示/違反報告)
ワサビーム(プロフ) - 中村(平日低浮上)さん» こちらこそすいません!更新、頑張ってください! (2016年9月30日 18時) (レス) id: 4ee0338bf1 (このIDを非表示/違反報告)
中村(平日低浮上)(プロフ) - ワサビームさん» ご指摘ありがとうございます!!そのあたり全く調べずに書いてしまっていました…申し訳ない(´Д`;) 色々と調べた結果、原文丸々というわけではないので参考と直させて頂きました。細かいなんてとんでもないです!ありがたすぎます!本当にありがとうございました!! (2016年9月30日 15時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年9月19日 21時