天の配剤 ページ29
「――では、それはそういうこととして。……あっちはどうする」
「…アレ、か。……三日後だな。三日後の子の刻、西の港で」
「わかった、あそこだな。だがいつも通りだぞ」
「わかってる。幕府の犬に動きがあれば即中止だ」
アレやらあそこやら、指示語だらけで進むその話し合い。しかしそれも終わったらしく「それじゃぁ三日後」という言葉を皮切りに二人が背を向けた。――無論それを逃す気はない。
一瞬どちらにしようか迷ったものの、傷の男の背中に狙いを定めた。尾行のため足を踏み出したそのとき。
(………あ、)
がさり、なんて。不運なことに足元に転がっていた紙くずにあたってしまった。――瞬間、空気が固まる。
「…誰かいるのか」
別々の方向へ歩き出したはずのふたりの男がそれぞれ刀を抜き、あたりを見回した。…これはやらかしたか、なんて冷や汗を浮かべていると。
「―――雨?」
――これを、天の配剤というのだろうか。朝から雲行きの怪しさを感じていた空がこのタイミングで水を落としてくれたようで。
十数秒と待たずにザンザン降りとなった雨を見て男たちは音は雨によるものだったのかと納得したらしい。仕舞われた刀と再び歩き出したそいつらに安堵の息を吐いた。
(……でも、こんな場合は。)
今のこともあり警戒心が強まっている可能性が高い。…深追いは危険か。
真選組に動きがあれば中止と言っていた三日後の“アレ”とやらもわかったことだしまぁ焦ることもないだろう。
今日のところは見逃してやるよ、とふたつの背中を見送って。
「――…さぁて」
誰もいなくなった裏路地、ずぶ濡れた私の声が響いた。それには多少の上機嫌が滲んでおり、同時に口角も上がる。
「……骨の髄まで、調べてやろーじゃないの」
真面目ですから、なにしろ。書類仕事が嫌いなだけですから。
やる気に燃えつつ、雨に濡れつつ。黒いブーツは小さな水しぶきを上げながら、力強く帰路についたのだった。
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朝 - お疲れ様です。やっぱり素敵です。(^O^) (2019年11月1日 18時) (携帯から) (レス) id: 6f8b22e690 (このIDを非表示/違反報告)
1の次は2 - その次は3なのだ (2019年3月11日 16時) (レス) id: 0f19eb4563 (このIDを非表示/違反報告)
ハーレクイン(プロフ) - 山崎がかっこいい…中村さん流石です…!…そんな作者様になら!きっと坂本辰馬も書けると思います!(必死)お願いしますうううう坂本さんマイナーなんですよおおお日替わりしかないんですよおおおお……検討よろしくお願い致します。応援しています! (2018年9月5日 0時) (レス) id: b56fa1b191 (このIDを非表示/違反報告)
ワサビーム(プロフ) - 中村(平日低浮上)さん» こちらこそすいません!更新、頑張ってください! (2016年9月30日 18時) (レス) id: 4ee0338bf1 (このIDを非表示/違反報告)
中村(平日低浮上)(プロフ) - ワサビームさん» ご指摘ありがとうございます!!そのあたり全く調べずに書いてしまっていました…申し訳ない(´Д`;) 色々と調べた結果、原文丸々というわけではないので参考と直させて頂きました。細かいなんてとんでもないです!ありがたすぎます!本当にありがとうございました!! (2016年9月30日 15時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年9月19日 21時