健康体を取り戻せ ページ10
――――――
「………うえ、」
――吐きそう。
本日ベッドから起き上がり最初に発した言葉はそれであった。疑いようなく最悪な一日の始まりである。…う、とまたこみ上げてきた吐き気を飲み込んで。
(……さっすがに、飲みすぎたか…。)
ズキズキと痛む頭を押さえた。――昨日、私は結局夜中の2時を過ぎるくらいまであの飲み屋に入り浸っていたのだ。どうやら店主に気に入られたらしく閉店時間を延長までしてもらって。
普段はキャバクラでも余り酒を飲まないってのに突然これだけの過剰摂取である、そりゃ二日酔いにもなるってもんだろう。はぁ、と吐いたため息も酒臭い気がする。
「……あー、気持ち悪っ、」
とにもかくにも、とベッドから起き上がり洗面台へ向かった。顔でも洗おう、目覚めよう。そんな思惑があったのだけど――しかし。
(…だめだこりゃ。)
パシャリ、水の塊を顔に打ち付けたってこれっぽっちも爽快な気分になんてなれはしない。試しに歯を磨いてみても消えたのは口の中の酒臭さだけであった。
もう無理、もう策なし、なんて唸り声を上げながらひたすら流れる水を見つめて、でもそれも数十秒したところで止める。傍から見たらホラー以外の何物でもないし。
タオルで顔を拭きながら鏡を見つめてみればそこには如何にも疲れたような顔をした私の姿が映っていて、ため息を吐いた。……この調子じゃすごいスピードで老けていきそう。
恐ろしい現実からは目をそらすのが一番だ。洗面台に背を向けて居間に戻り、ベッドへ身を投げる。――あーもう、折角の休日だってのに。
のろのろとした動きでスマートフォンを起動させる。二日酔い、どうすりゃ治るんだ。経験も頼れる友人もいない私が頼れるのは検索エンジンだけであり。
「――二日酔い、食べ物…」
ハチミツに梅干にグレープフルーツ。……生憎我が家にはどれもないけど、コンビニでも行けばまぁそのうちひとつくらいは手に入るか。
よし、と私は覚悟を決めた。二日酔いの体に鞭打って再度ベッドから立ち上がる。
「……健康体を、取り戻せ」
気合いを入れるように頬をバチンと叩いたのち、私は足を踏み出したのだった。
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蘓澳 - さすが中村さん!って感じで楽しく読ませて頂きました! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀`)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます!夢主ちゃんホントにいい性格ですよね!見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです!とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月25日 23時