陰鬱な ページ7
「――つーか俺が参加することは決定なのか」
と、ここで口を挟んだのは土方十四郎。
「逆に聞きますけど断れるんですか土方さん」
「……んなもんなんとか、」
「こちらが法的措置をとれば真選組どうなっちゃうんでしょうね」
「…それは」
「局長が一般女性をストーキングなんてワイドショーの話題くらいは掻っ攫えますよ」
そいつは再度言葉に詰まる。土方十四郎を黙らせるなんてお妙お前よくやったすごい、と内心で褒めながらざまあみろとほくそ笑んだのだが――しかし。
「……真選組の面子のために、千歩譲って協力するとしても。…条件がある」
「条件?言ってみやがれ」
(――本当にOKしちゃうのかよ!)
予想外の展開に目を見開く。ちょっとあんたがそれだとこっちにまで変な風吹くだろうが、こっちまでそんな空気になるだろうが!
……そんな私の心の叫びを知ってか知らずか、そいつはこちらへ目を向けて。
「…相手役はお前だ、猫かぶり」
「……、…――はァァアアア!!?」
――なに!?ふざけてんの!?
変な風が吹くどころか崖から突き落とされた気分である。どうして土方十四郎張本人に偽装カップルの相手役へ指名されなければならないのか!どうして、
「やっぱできてんじゃねーか」
「Aさんもそんなに必死に隠そうとしなくていいのに」
どうしてバカどもにこんな解釈をされなくてはならないのか!!
一も二もなく土方十四郎に詰め寄り。
「――――気でも触れたかイケメンコノヤロウ!!」
「うるせェなこちとら至って真面目だ。近藤さんの未来の嫁とんなことするわけにゃいかねェだろ」
「オイ誰が嫁だ」
「んなこたしるか!どうして私を巻き込むんだよそこらのキャバ嬢へ声かけろよ!多分偽装じゃなくとも大歓迎してくれるから!」
「だからベタベタしてくる女は好きじゃねェって何回も言ってんだろうが!こっちも苦渋の決断なんだよ受けろアホ!」
「お前の好みはクソほどどうでもいいんだよ!」
大事なのはそんなことより偽装カップル云々であって。…改めて周りの顔を見回した。土方十四郎がそちら側へ行った今、私の味方はいないらしい。
「ま、よろしく頼まァ」
旦那は既に既定事項について話すような口調だし。――まって、コレもしかして。
「………私、決定ですか」
「諦めろ、俺は諦めた」
言ったそいつの目は死んでいて――…陽気なこの場に似合わぬ陰鬱なため息が、密かに重なったのだった。
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蘓澳 - さすが中村さん!って感じで楽しく読ませて頂きました! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀`)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます!夢主ちゃんホントにいい性格ですよね!見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです!とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月25日 23時