【銀魂】化けの皮【土方十四郎】

身を投げる ページ44

――――それは、土方十四郎と縁日へ来て少し経ったあたりでのこと。

屋台で食べ物を買ってちびちびと腹を満たしながら、私たちはなんてことなしに歩いていたんだけれども。




「……ちょっといいですか」

「……奇遇だな、俺も言いたいことがある」



…お互いが、同じタイミングで口を開いた。

………つまり、



「――つけられてるな」
「――つけられてますね」




―――先程からやけに視線を感じるというか、少し離れたところの茂みがガサゴソと言っているというか。

…まぁ、心配していた通りであり――はめられたってことだろう。



「プライバシーの侵害って死刑求刑できますか」

「無茶言うなアホ。…だが死刑執行なら俺たちでもできるぞ」
「ちょっとまってあんたが血迷ったら終わりだから」



土方十四郎が諦めたら最早殺意しか残らない。良心はいずこ。

…ともかく、何にしろそいつら――天パとクソガキに殺意を抱いているというのはお互い同じらしかった。いや誰がこっち見てるかとかわかんないけど。でも普通に考えてそいつらだろう。




「何が嬉しくてそんなクソわけのわからないことやってんですかねあのバカヤロウどもは」


「大方弱みを握るためとかそんなとこだろうな。…にしても大分大人数じゃねェか」




そこでち、と舌打ち。…そういえばそいつの舌打ちを聞くのは久しぶりだなと思った。――いや、今はどうでもいいか。

それよりも。




「……大人数？」




思わず聞き返してしまう。私は勘でクソガキと万事屋の旦那が来ているのだなと思ったわけだけど、…大人数とは。

ガサガサ、まだたまに揺れるその茂みに目を向けながら返答を待っていれば。




「職業柄だ。人の気配察知することにゃ慣れてんだよ」

「なるほど。…で、何人くらいですかそれは」

「……大体…、五人、か？」




――五人、ごにん、…五人!!?





「――何のツアーだよ！誰だ残り三人!!のぞき見がそんなに楽しいか！吊るしてえ!!」


「落ち着け！周りがビビるだろーが！」



何がともあれ、と土方十四郎。ストレスに耐えかねたのか煙草を一本取り出し、それに火をつけると。




「――――撒くか」

「もちろん」




私もふたつ返事である。茂みに背を向け、足を進める。


クソガキと天パと、正体不明の三人。恨むべきそいつらに内心あかんべえを繰り出したのち、私は土方十四郎と共に人ごみへ身を投げたのだった。

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