こんなときに限って ページ27
―――――――
――前回の土方十四郎の来店から、二週間。今日も今日とて仕事を終えた私は、キャバクラの控え室にてため息をついた。
(……あのヤロウ。)
――また今日も、来なかった。
…無論、奴の来店が不定期であることはわかっている。3日と空けずに来たり一ヶ月空いたり、それこそまちまちなのである。
……でも、それにしたってこんなときに限って中々来ないとか。ぶん殴る絶対。私のこのなんとも言えない気持ちもきっと土方十四郎に一目会って一言二言かわしてしまえば消え去るだろうから、余計に救いようがない。
こちらが勝手に悶々としているというだけなのは見ないふりをして、そいつに暴言をぶつけまくった。何が嬉しくて土方十四郎のことでこんなにも悩まなきゃならんのだ。
少し乱雑に帰り支度を済ませ、立ち上がったそのとき。
「――あ、Aさん!よかった、まだいて」
私1人だったこの控え室に、投げ込まれたその声。…お妙のものである。
高確率で面倒ごとを運んでくるそれに、嫌な予感を感じつつ振り返れば。
「…あの、ちょっと頼みたいことがあるんですけど」
いつも通り綺麗な微笑を浮かべて言うお妙。
「…なに?」
「実は、忘れ物を届けて欲しくて」
「……忘れ物?」
それはどういう風の吹き回しだ。客の忘れ物なら連絡すればキャバクラまで取りに来るだろうし。
少し訝しみつつ誰のものか聞いてみると。
「――近藤さんです」
「はい?」
「真選組の近藤さんです」
「…はい?」
繰り返されたって頭に浮かぶのはクエスチョンマークオンリーである。え、近藤ってゴリラでしょ?なんでゴリラ?なんでゴリラの忘れ物を私が?
「取りにこさせれば?」
「…それが、キャバクラに忘れていったんじゃなくてうちに忘れていったんですよ」
「……いや、なら家まで取りにこさせれば?」
「そんなことしたらあのゴリラを家に呼ぶようなものじゃないですか、ごめん被るわ」
「でもなんで私?ごめん被りたい」
私の言葉の後半は微笑でスルーするらしき彼女は、穏やかかつ強引な口調で。
「Aさんなら土方さんとも仲いいし、真選組まで届けてくれないかと思って」
「…はァァアアアアア!!?」
いくつか訂正させてもらいたい。まず私は土方十四郎と仲がいいわけじゃないしそんな気軽に真選組へ行けるような間柄でもない。断じて、だ。
「無理に決まってんでしょーが!」
首を振りつつそう言うと。
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蘓澳 - さすが中村さん!って感じで楽しく読ませて頂きました! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀`)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます!夢主ちゃんホントにいい性格ですよね!見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです!とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月25日 23時