逃げ道 side土方十四郎 ページ23
【土方十四郎side】
――――――――
――万事屋の野郎に妙なことへ巻き込まれちまってから、数十分。
俺は、屯所の自室へ帰ってきたところなのだが。
「――――十四郎」
……色々なことが、頭を離れなくていけねェ。
(…女に名前呼ばれるなんざ、いつぶりだ。)
耳にこびりついて離れないその声から逃げるように瞼を閉じ、ため息を吐く。
(それにしても、)
…――――まさか奴に名前を呼ばれる日が来るとは。………そしてまさか、それを心地良いと思っちまうとは。
(……一体、いつからこうなった…?)
そいつとの初対面から今までを思い返すが、どこまで行っても喧嘩ばかりしていたことしか見当たらず。
かわした言葉と言っても『暴言女』やら『クソ野郎』、その他『アホ』『バカ』『死ね』『殺す』等々。…物騒極まりない。
それがどうしてこうなったんだ、と溢れたのは苦笑だった。もうすでに日も暮れ、部屋を包むのは行灯の灯りのみである。
棚やら何やらの影が柔らかに伸びる、特に面白みがあるわけでもないこの部屋の中。不意に浮かんできたのはやはり奴の顔――俺に名前を呼ばれた時の、あの猫かぶりの顔で。
いつもいつも皺が寄っている眉間にはなにも刻まれておらず、如何にも衝撃を受けたというかのような――素直な驚きと、少々の照れ、か。そんなもんが垣間見えた、あの顔。
…なんつー顔してんだよテメェは、などとぼやいてみた。……不機嫌な顔だけしてりゃいいもんを、あんな顔見せられたら。
――――妙な気分になっちまうじゃねェか。
万事屋の野郎どもが双眼鏡越しにあれを見ていたかもしれないと思うと、どうにも気に食わない気持ちになる。自分らしくねェ自分にもう一つため息を吐き。
(…仕事でもするか。)
結局そこへ逃げ道を見出した、とある日暮れのことなのだった。
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蘓澳 - さすが中村さん!って感じで楽しく読ませて頂きました! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀`)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます!夢主ちゃんホントにいい性格ですよね!見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです!とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月25日 23時