前時代の産物 ページ22
「……写真?」
私の唐突な提案に予想通り土方十四郎は訝しげな視線を寄越す。もうちょっと意外性ってものを持った方がいい。
ともかく、だ。「いいじゃないですかー」と棒読みで言いながら土方十四郎へ近づく。
「このタイミングで猫かぶり発動か。謎だぞ」
「うるせえな黙って合わせてろ」
如何にもイチャつくカップルを装いながら私は中腰で土方十四郎に寄り添った。巷で噂の自撮り風にスマートフォンを構える。――画面に映るのは、最低男A。
「……成程、こんなことが出来んのか」
「ガラパゴスはもう前時代の産物ですよ、機種変機種変」
「どこの回しもんだ」
言い合いながらも、パシャリ。浮気相手の顔も男の顔もしっかりと写っている。完璧だ。
漸く見ることができた男の顔は中々の男前で、思わず舌打ちがこぼれた。
「――これだからイケメンってのは!」
彼女がいるってのに他方に手を出して調子に乗って調子に乗って!なんだあのニヤついた顔!クソ腹立つ!
いつも通りイケメンというものの存在に声を荒げる私へ土方十四郎が一言。
「……あの野郎に関しちゃ同意するが、俺を見ながら言うのはやめろ」
「だってそこにイケメンがいたから」
「何なんだよお前は!」
――まぁあんなのとあんたを一緒くたにして考えようなんて、思っちゃいないけど。
口に出さないながらも浮かんできた言葉に、私はここ数日でどれだけ変わったんだよと苦笑を漏らした。
(……否、語弊があるか。)
私はここ数日で、どれだけ“気づいた”んだよ、全く。これまではどれだけ見えてなかったんだよ。もしかしてバカなの、私は。
どこか温かいものの滲むため息をこぼした。見上げた土方十四郎の顔も、さして不機嫌そうではない。
「――土方十四郎」
「なんだ、キャバ嬢」
「ミッションコンプリート、ですけど」
どーします、なんて。……聞いても仕方ないけど聞いてしまった。逸らした視線が、空を泳ぐ。
(…名残惜しいとか、本当。)
私のキャラじゃないんだけど。発言を撤回しようと口を開けば。
「――俺としては」
「…はい?」
「茶の一杯くらい飲んでいってもバチはあたらねェんじゃねーのかと思うが」
お前はどうだ、と。……そんなもん。
「私もそう思います」
今だけはどこかからこちらを見ているらしい銀髪一行もプライドも何もかも忘れて、――私は満足げに口許を緩めた土方十四郎を見つめていたのだった。
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蘓澳 - さすが中村さん!って感じで楽しく読ませて頂きました! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀`)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます!夢主ちゃんホントにいい性格ですよね!見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです!とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月25日 23時