関門 ページ17
「――あ、それでですねえ。ご来店いただくカップルの方には色々お聞きしているんですけど」
これは客だキャバクラの客だ、と言い聞かせて笑顔を保つ。本心を言えばまだ何かあるのかよ死ねという感じだけれどもそれも胸の内にのみこんで。
「そうなんですかぁー、どんなことを?」
無愛想な彼氏を連れた愛想のいい彼女らしく振舞った。お前はいいよな土方十四郎、仏頂面で立ってるだけなんだから。
髪の毛ぐるぐるまきの店員はよくぞ聞いてくれましたとでも言うかのような顔をして。
「――どこで出会ったのか、どんな関係だったのか。あとどうやって呼び合っているのかを聞かせていただいてますー!」
………………ど、
「(どうすんだこれェェエエエエ!!!?)」
「(知るかァァァアアアア!!!なんでそんな質問されなきゃならねェんだ!)」
「(どーせアレですよ世のカップルはこうやってナチュラルに惚気けたいんですよ死ね!)」
「(つーかどうすんだコレマジで!)」
それはこっちの台詞である。突如小声で声をかわし始めた目の前のカップルにきょとんとしている店員に愛想笑いを向け、考えた。――だって。
「(バカ正直に行くとしたら出会ったのキャバクラだし険悪な関係だし私フルネーム呼びだしお前に至っては私の名前呼んでねえだろ!)」
「(仕方ねェだろ!捏造しろ、俺は無理だ!)」
「(はァァ!!?あとで覚えてろよ!?)」
大体捏造ったってどうやってだ!
冷静に考えてもキャバクラで出会ってからキャバ嬢と客というこの関係は一歩も動いていないし。現在進行形でキャバ嬢と客だし。んなもん白状するわけにはいかない。
ギギギ、店員の方へ視線を戻し。
「……で…出会いは、」
「出会いは!?」
「…………職場です」
「えぇーそうなんですか!社内恋愛ですか?」
「いや、…こっちのホームグラウンドに向こうがたまたま来たっていうか担当だったっていうか」
「取引先ですか!じゃぁ会社員同士だったんですね!」
嘘は言ってない、嘘は。私は職場だし土方十四郎だって上司に連れてこられてたんだから仕事みたいなもんだ。私正直者。セーフ。
止まらない冷や汗をもろともせず微笑んだ。取引先となるとまた意味合いが違ってくるので笑って誤魔化す戦法である。
…これで第一関門と第二関門は乗り切れた、よかった――――けれども。
「あ、それでなんて呼び合ってらっしゃるんですか?」
関門は、第三まであるのである。
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蘓澳 - さすが中村さん!って感じで楽しく読ませて頂きました! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀`)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます!夢主ちゃんホントにいい性格ですよね!見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです!とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月25日 23時