悔しいけれども ページ14
「――それじゃァな」
――砂がまばらについた、黒い上着。そいつはそれを気にすることなく羽織って、そしてその後ろ姿は遠のいていく。
「……精々仕事しろ、ポリ公」
小さく落とした暴言は、申し訳程度のものになってしまった。……だって、ずるいんだってば。
さっきまで私を座らせるため敷いていたその隊服にはいつもの黒光りの代わりにくすみが目立っていた。…制服なんてその組織の誇りみたいなもんだろう。――それを、何の躊躇もなく。
普通なら地面に座らせたって特に不満もぶつけられないだろうあの状況で、そんなことしてしまうのだ、奴は。
イケメンとか男前とか、そういうことは置いておいて。
(――――格好、いい。)
――不本意だけど、悔しいけど。そう思ってしまうのは、不可抗力ということにしておいてほしい。
背後の建物に背中を預け、日陰から青空を見上げた。どういうわけか昨日の飲み屋の店主の言葉が蘇る。
「――憎まれ口叩きながら、そう悪く思っちゃいねぇ顔」
悪く思っちゃいない、ねえ。あぁ確かに、と髪の毛をひと束耳にかけた。
……仕方ないから認めてやろう。私は多分あのイケメンヤロウを、憎からず思っている。遠慮なしに繰り広げられる諍いを、不意に零される笑みを、中々に心地よいものと感じている。
(――下手したら、“憎からず”どころか、)
……私は――、…――と。
……そこで思考にストップをかけた。
(…流石にそれまで認めるのは気に食わない。)
私のプライドが許さない。……まだ。
いとも簡単に頭に思い浮かべられるようになってしまったその黒髪へ思いを馳せながら「クソヤロウ」とただ一言呟いて。
「……偽装カップル、」
さして嫌がっちゃいない自分にも、気づいちゃったじゃないのよ。
それでも次会った時にはきっと土方十四郎に喧嘩をふっかけにいくだろう自分を予想しながら、私は口許を緩めたのだった。
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蘓澳 - さすが中村さん！って感じで楽しく読ませて頂きました！ (2016年10月11日 17時) (
レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村＠平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀｀)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます！夢主ちゃんホントにいい性格ですよね！見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです！とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：中村
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時：2016年8月25日 23時
