皮肉なことに、 ページ11
――――――――
「――ありがとうございましたー」
如何にもやる気のない店員の声を聞き流しながらビニール袋を受け取った今現在、私はコンビニにて用を済ませたところであって。
これっぽっちで600円も、と袋の中のハチミツを睨みつけた。お前効かなかったら覚えてろよ、とか思ってしまうあたりまだ少しアルコールが残っているのかもしれない。
まだ少し覚束無い足取りで帰路につく。頭上でさんさんと輝く太陽に理不尽にいらつきながら少しだけ歩調を早めた。――のだけれど、
「……う、わ、」
――ぐわん、と視界が揺れた。頭から血が引いていくような独特な感覚に襲われ、見ず知らずの家の塀に右手をつく。
(……貧血?)
立ちくらみにしては少しだけキツすぎる気がしなくもない。そして少し長すぎる。
引く気配のないその感覚に、なんとか倒れないよう足を踏ん張っていれば。
「――――オイ、どうした」
……前方から声がかけられた。――その声に、思わず。
(…皮肉すぎでしょ。)
内心、ぼやいた。
平衡感覚を失って上も下も右も左もわからなくなってるってのに、何の脈略もなく突然投げ込まれたその声の主は一瞬でわかったのだ。昨日居酒屋で散々こき下ろしたそいつの声だということが。
グワングワンと揺れる頭をなんとか上げて、チカチカする視界にそいつをおさめる。
「――ひじかた、とうしろ、」
「大丈夫かお前、貧血か?」
「だいじょ、ぶに見えるか、はっとばす」
「……暴言吐いてる場合かよ」
文句言うなよ、なんていう声が聞こえたと同時、肩を貸された。ゆったりとした歩調で、近くの何かの店の軒下まで連れて行かれる。
ほろ苦い匂いに包まれながらぼうっとしていれば、土方十四郎は何の躊躇もなく隊服の上着を地面に敷いた。
「キツいなら座れ」
そんなことを言うくせにこちらの答えを聞かぬまま私をそこに座らせた土方十四郎。……日陰に入ったせいか座ったせいか、声を発することができる程度には回復した。
はぁ、とため息を吐いてそいつを見上げる。
「……どうしてここに」
「市中見回りだ。…逆にお前はどうしたんだよ一体、大丈夫か」
「微妙に、大丈夫じゃないです。コンビニ行ってきた帰りに、あんなことに」
「心当たりは」
「さぁ、全く」
土方十四郎は眉根を寄せた。こちらも少し容態が悪化しつつあり倦怠感に顔をしかめる。
すると。
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蘓澳 - さすが中村さん!って感じで楽しく読ませて頂きました! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀`)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます!夢主ちゃんホントにいい性格ですよね!見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです!とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月25日 23時