化けの皮、剥がれる ページ6
天下の公道で何してやがる、と続ける低い声。――酔っ払い?
思わず声の主の方を振り返り、そのシルエットを睨みつける。
「――こちとらシラフじゃ、ボケナスが…あ?」
「あ」
そうして私がそのまま固まるのと金髪野郎が「し、真選組!!!!」と反射で逃げていくのは同時だった。
視線の先では見覚えのある顔が煙草を咥えながら私の顔を凝視していて。
何度かすまいるで目にしたことのある黒い隊服、黒い髪、とてつもなく整った顔。鋭い目。
(……あれ、これ、なんだ、つまり、)
――――土方、十四郎ォォオオオオオオ!!?!?
人違いを願うも、その眉間の皺と怪訝な色を映す目を見る限りそっくりさんではないようで。
(…最っ悪だァァァアアアア!!!!)
私は頬を引きつらせた。――こんなことがあってたまるか!
せめてもの悪足掻きにと「や、やだ〜土方さんこんなところで〜奇遇ですね?」なんて上目遣いをしてみるが「……落差」と。なんてことだ無駄だこれは!
「…お前そんなキャラだったか?」
土方十四郎に至っては神妙な顔でそんなことを聞いてくる始末だし。……あぁもう、
(…やらかした…。)
頭を抱えるも、決して状況が改善するわけではない。いい策も浮かんでこないし――私は腹をくくり。
「――キャラ作ってて悪いかコノヤロウ!キャバ嬢に夢を求めるなこのクソイケメン」
「……は?」
「ほら何その顔“俺がイケメンとか今更だろ”とか思ってんの?腹立つ!」
「いやお前何なんだよ!」
言いがかりにもほどがあんだろ!と土方十四郎。
…まぁこちらの機嫌が悪いこともあって多少理不尽かもしれない。反省なんかしないけど。
「私の憲法だとイケメンに人権とか存在しないんで」
「イケメンイケメンうるせェんだよ!」
つーかこんな明るい内から酔っ払いとかどういう生活してんだ、なんて。…だぁかぁらぁ、
「私はシラフだっつってんだろがボケ」
「見るからに一杯やってきたあとのおっさんだぞ」
「喧嘩売ってんの?なに?婦女暴行で訴えてやろうか」
お互い眉間の皺は濃くなるばかりである。その鋭い目を睨み上げ。
「――とにかく、私は帰りたいんで帰してもらえます」
「誰も引き止めちゃいねェけどな」
「うっわ苛つく」
――そうして最後まで奴へガンを飛ばたのち、私は帰路についたのだった。…明日になれば土方十四郎が記憶喪失になっていることを、切に願いながら。
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軒夜月 - めっちゃ面白いです!よくこんなネタ思いつきますね(汗)すごいです!これからも頑張ってください! (2016年10月19日 0時) (レス) id: 0ff51cc9e5 (このIDを非表示/違反報告)
蘓澳 - こんな、面白い話を書くのは誰なんだろうと思い、作者を見たところ、やはり中村さんだったという.....!中村さんの小説大好きです!これからも頑張ってください!応援してます!!これからも末永く読ませていただきます!笑 (2016年10月10日 22時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!お陰様で一巻完結とさせていただきました。二巻もお付き合い頂ければと思います!よろしくお願いします(*^_^*) (2016年8月27日 6時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
名無し17343号(プロフ) - この小説を読んで、土方さんがもっと好きになりました!キャラ崩壊してなくて、とても読みやすいです。 (2016年8月26日 11時) (レス) id: 683d111013 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜 - すごく面白いです!更新頑張ってください! (2016年8月25日 9時) (レス) id: 00e4fea1b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月14日 9時