いらぬもの ページ46
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――ふわり、と急浮上した意識。ぬくぬくとしたどこか奥の奥の方から掬い上げられるような感覚に、私は欠伸混じりで目を開いた。……珍しく、いい目覚めである。
(……何時だ、今。)
というか今日は仕事あったっけ。寝ぼけ眼を擦りながら時計の方へ目をやろうとし――…不意に捉えた男の姿に、残っていた眠気は吹き飛んだ。
「――――土方、十四郎」
まだ少しだけ回らない舌を動かして、驚きを紡ぐ。
……アレなんでこいつがここに、と思わず自分の衣服が乱れていないか確認してしまったのは不可抗力でお願いしたい。一瞬でもそんな危惧をした自分をぶん殴りたい。吐くぞ寝起きで吐くぞ。
寝癖のついた頭を少し直しながら、ぼうっと土方十四郎の姿を見つめた。
忌々しき灰色の着流しを見事に着こなし、ソファにもたれて眠るそいつ。お前絶対関節痛めてるだろ、とは今は黙っておき。
今は閉じられた鋭い双眸、通った鼻筋、癖のない黒い髪。下品でない色気。
(――ほんっと、こりゃ、)
なんてイケメンなんだ。イケメン嫌いになる前の私なら惚れてたかもな、とそこまで考えて身震い。……やめだやめ、今現在私はイケメン嫌いなわけだし。
でも、それにしてもだ。……なんだかこうして――口論も何もなしで、土方十四郎を見つめるのは新鮮である。…新鮮である、けれど。
他意の絡まない観察はいらぬものまで見つけてしまいそうで、静かに視線をそらした。
土方十四郎を視界に入れぬよう時計を確認していれば、数秒しないうちにごそ、と衣擦れの音が聞こえて。
「――――朝、か」
どうやら、そいつが目を覚ましたようだった。
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軒夜月 - めっちゃ面白いです!よくこんなネタ思いつきますね(汗)すごいです!これからも頑張ってください! (2016年10月19日 0時) (レス) id: 0ff51cc9e5 (このIDを非表示/違反報告)
蘓澳 - こんな、面白い話を書くのは誰なんだろうと思い、作者を見たところ、やはり中村さんだったという.....!中村さんの小説大好きです!これからも頑張ってください!応援してます!!これからも末永く読ませていただきます!笑 (2016年10月10日 22時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!お陰様で一巻完結とさせていただきました。二巻もお付き合い頂ければと思います!よろしくお願いします(*^_^*) (2016年8月27日 6時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
名無し17343号(プロフ) - この小説を読んで、土方さんがもっと好きになりました!キャラ崩壊してなくて、とても読みやすいです。 (2016年8月26日 11時) (レス) id: 683d111013 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜 - すごく面白いです!更新頑張ってください! (2016年8月25日 9時) (レス) id: 00e4fea1b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月14日 9時