風情ゼロ ページ5
――それはある、キャバクラからの帰り道。
珍しくお昼シフトだった私は暮れなずむネオン街をひたすら歩いていた。…それにしても。
(…風情がないってこのこと。)
色とりどりのネオンが夕焼けの赤をかき消して、夜への扉を開くこの場所。見上げた空には一番星だって見えやしない。
柄になくため息を吐きまた歩を進め始めると――…それを妨害する動きがあった。
つまり、後ろから腕を掴まれたというか。
「お姉さん遊ぼうよ〜」
面倒なのに絡まれたというか。
(――最っ悪だ…！)
今日は早朝からこんな時間まで働かされてもう既に疲れは限界なのである。早く帰ってマイダーリンお布団と仲良くやりたいのである。そこをこんな、頭金ピカな男に阻まれて。
(――ほんとこのクソ、)
疲れた頭では最早罵倒のボキャブラリーすらも尽きたらしい。小学生並みの文句を内心でマシンガンのように発しながら金髪野郎を見つめた。
…とにもかくにも状況打破だ、と私は策を練る。腕を振り払う？いやいや無理無理、力的に。ここは穏便にすませよう穏便に。
「……あのねえ、」
「なぁ〜いいじゃん。かぶき町はこれからが一番楽しい時間なんだぜ？」
――そして私が口を開いた瞬間、それを遮る金髪野郎。
…溜まっていた疲れのせいか、この間延びした口調のせいか。それとも目の前の男のイケメンではないがそれと同じくらい気取った表情がムカついたのか。――まぁ多分、全部だろう。
何がともあれ、私の堪忍袋の緒は思ったよりも脆かったらしい。一瞬でブチギレた。
「――遮ってんじゃねえぞクソ男、こちとら仕事帰りなの私生活でまで男に愛想振りまけないから本当虫唾走るからお願い消えろ」
「…あぁ？」
「なに？お金？お金払えばいいの？ほら300円あげるから失せろ金髪この野郎！」
「てめェクソアマ、さっきから聞いてれば…」
「うっさい！アンタのようなヘラヘラした中身だけイケメン気取りな奴ってイケメンの次に嫌いなのよ！こんな美人連れ歩けるわけないだろが！」
「最早褒められてんのか何なのかわからねぇよ！何なんだよこのアマ！」
「何なんだよ？なんだその失礼な言い草は！」
ひぃっと金髪野郎が声を上げた。……アレ、なんで私そんな恐ろしいものを見つめるかのような目で見られてんの何なの。
私が眉間に思い切り皺を寄せた、そのとき。
「――オイ、そこの酔っ払いふたり」
そんな声が、落とされた。
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軒夜月 - めっちゃ面白いです！よくこんなネタ思いつきますね（汗）すごいです！これからも頑張ってください！ (2016年10月19日 0時) (
レス) id: 0ff51cc9e5 (このIDを非表示/違反報告)
蘓澳 - こんな、面白い話を書くのは誰なんだろうと思い、作者を見たところ、やはり中村さんだったという.....！中村さんの小説大好きです！これからも頑張ってください！応援してます！！これからも末永く読ませていただきます！笑 (2016年10月10日 22時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村＠低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます！お陰様で一巻完結とさせていただきました。二巻もお付き合い頂ければと思います！よろしくお願いします(*^_^*) (2016年8月27日 6時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
名無し17343号(プロフ) - この小説を読んで、土方さんがもっと好きになりました！キャラ崩壊してなくて、とても読みやすいです。 (2016年8月26日 11時) (レス) id: 683d111013 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜 - すごく面白いです！更新頑張ってください! (2016年8月25日 9時) (レス) id: 00e4fea1b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：中村
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時：2016年8月14日 9時
