禁じ手 ページ21
「遠慮しなくていいですからね」と柔和に笑う上条浩史。その気の抜けるような顔に反して肉食系なのかもしかして。趣味に映画鑑賞なんて答えたとこから計画通りなのかもしれない。
(……だけども。)
無論私も、この縁談を成立させる訳にはいかないのだ。綺麗な愛想笑いを浮かべて上条浩史を見つめ返す。
「ごめんなさい、お断りさせて頂きます」
「……それは、映画についてですか?」
う、と思わず言葉に詰まった。その問いに透けて見えるのは『見合いも断るということなのか』なんて言葉であり。
なに、お見合い本番開始数分でそこ迫っちゃうわけ?やり手か。やり手なのかこいつ。
キャバ嬢の意地にかけて、こちらも腹をくくった。
「――映画についても、ですが」
「…も?」
「本日は、お見合いをお断りさせて頂くために参りました」
私の言葉の衝撃が大きかったのか、目を見開く浩史以外のチーム上条。ストレートすぎる物言いに土方十四郎もぎょっとした目でこちらを見つめている。
……流石にいきなりすぎたか。でもこれ以外に返す言葉もなかったし。
一方未だ平静を保つ上条浩史は「そうですか」なんて。
「…え?」
「いえ、なんとなくOKして貰えそうな感じがしなかったので。…予想が当たってしまった」
苦笑を漏らす姿すらも柔和だな、と私は呑気に考えた。でもありがとうお坊ちゃん。物分りいいとことてもいいと思う。
これなら行ける気がする、このお見合い無事に済ますことも無理じゃない、なんて私が希望を抱き始めたそのとき。
「――でも、少し残念なので理由を聞かせてもらえますか」
「…理由?」
「断るってことは何か理由があるんですよね」
「………え゛っ」
思わず零れた品のない声に土方十四郎から肘鉄が入る。てめえコノヤロウ覚えてろよ殺す。
…っていうか、それよりも。――理由?
(…どうしよう。)
多分ここを乗り切ればいける。無事終わる気がする。しかし薄っぺらい理由を紡げば相手方の機嫌を損ねてしまうことが目に見えているし。
――――こういう時、荒波立てず誰も傷つけず、そして反論の余地がない理由。
…そんなのって。
(………思いつかない、訳ではないけれども。)
それは奥の手というか禁じ手というか――…主義に反する、というか。……でも、これ以外に策があるわけでもない。
ふぅと重く小さなため息を吐き、横目で土方十四郎を見上げた。
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軒夜月 - めっちゃ面白いです!よくこんなネタ思いつきますね(汗)すごいです!これからも頑張ってください! (2016年10月19日 0時) (レス) id: 0ff51cc9e5 (このIDを非表示/違反報告)
蘓澳 - こんな、面白い話を書くのは誰なんだろうと思い、作者を見たところ、やはり中村さんだったという.....!中村さんの小説大好きです!これからも頑張ってください!応援してます!!これからも末永く読ませていただきます!笑 (2016年10月10日 22時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!お陰様で一巻完結とさせていただきました。二巻もお付き合い頂ければと思います!よろしくお願いします(*^_^*) (2016年8月27日 6時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
名無し17343号(プロフ) - この小説を読んで、土方さんがもっと好きになりました!キャラ崩壊してなくて、とても読みやすいです。 (2016年8月26日 11時) (レス) id: 683d111013 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜 - すごく面白いです!更新頑張ってください! (2016年8月25日 9時) (レス) id: 00e4fea1b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月14日 9時