「そちらの方は?」 ページ18
「――えぇと、松平殿。この度はこのような席を設けて頂いてありがとうございます」
目の前の中年らしき男が口を開いた。その隣にいる女性も私のお見合い相手らしき同世代の男もふくよかで色白で、まさに金持ちという感じである。
(…いい暮らししてんだろうなぁ。)
少なくとも一介のキャバ嬢とは無縁の暮らしだろうことは断言できる。まさか彼らも目の前にいるのがただのキャバ嬢とは思いもよらないだろうな、なんて考えていたら。
「して、松平殿。…そこの御方は?」
――と、土方十四郎へ視線を向けた裕福中年男。
そういえばそうだ、普通この場にこの年代の男…しかもイケメンが同席してるっておかしいしね。まぁ土方十四郎は頭おかしいけど。
さてどんな言い訳をするのかと彼へ視線を向ければ、動揺する様子も見せず「護衛です」と。
「昨今は物騒ですので。栗子様にいつなにが起こるかもわかりませんし」
――成程、護衛ね。さすが真選組というか機転が利いている。……いや何私土方十四郎褒めてんだ気持ち悪い。
…何がともあれ土方十四郎の存在についてはそれで納得したらしき相手方。……しかし、また中年男が口を開く。
「えぇと、松平殿。それと大変恐縮なのですがな、」
――その栗子さんとやらはどこにいらっしゃるので?
………うん?
その言葉を理解するまで、約三秒ほどの時間を要した。栗子さんはどこにいるって栗子さん私だし。いや私じゃないけど今は私が栗子だしお見合いしてるしあんた方の目の前にいるし…うん?
頭の中を疑問符でいっぱいにする私へ、「いやその、このお嬢さんはどうにも……」と言葉を濁す男。
「…どうかされましたか?」
流石の土方十四郎も怪訝そうな声を差し込んだ。中年男はこれ以上なく言い辛そうに言葉を紡ぎ、
「――見合い写真と、同一人物に見えなくてですね…」
――――み、
「みあ――う゛ッ、」
見合い写真!!?と叫びそうになった私の脇腹を土方十四郎がつねる。ふざけんなこのやろう、と絞り出せば「テメェがな」なんて恐ろしい睨みを向けられた。踏んだり蹴ったりとはこのことである。
…というか、だ!見合い写真ってなんだ!何の話だ聞いてねえ!
こちらの動揺を知ってか知らずか親切にもその写真とやらを見せてくれる相手家族。そこには茶髪でおかっぱで、愛くるしく笑う女の子が写っていて。
(…いや、いやいやいや。)
――無理があるだろォォオオオオ!!!!
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軒夜月 - めっちゃ面白いです!よくこんなネタ思いつきますね(汗)すごいです!これからも頑張ってください! (2016年10月19日 0時) (レス) id: 0ff51cc9e5 (このIDを非表示/違反報告)
蘓澳 - こんな、面白い話を書くのは誰なんだろうと思い、作者を見たところ、やはり中村さんだったという.....!中村さんの小説大好きです!これからも頑張ってください!応援してます!!これからも末永く読ませていただきます!笑 (2016年10月10日 22時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!お陰様で一巻完結とさせていただきました。二巻もお付き合い頂ければと思います!よろしくお願いします(*^_^*) (2016年8月27日 6時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
名無し17343号(プロフ) - この小説を読んで、土方さんがもっと好きになりました!キャラ崩壊してなくて、とても読みやすいです。 (2016年8月26日 11時) (レス) id: 683d111013 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜 - すごく面白いです!更新頑張ってください! (2016年8月25日 9時) (レス) id: 00e4fea1b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月14日 9時