【銀魂】我世誰そ常ならむ【高杉晋助】

悩んで見つけた自分本位 ページ10

「――わからないです、高杉さん」


「･･わからねェ？」




と、私の言葉を繰り返した彼は「どういうことだ」なんてこちらに目を向ける。

･･････どういうことと、聞かれれば。




「――私が、もしも父を殺せるようになったとして」



･･そうしたら、そのとき。




「･････私は、何を得るのでしょうか」



確かに父は殺されて然るべきだとは思いますけど、と付け足す。･･･実の親を殺して得ることなんて何もないと、私は思うのだけれど。

しかし高杉さんは、動揺する様子など微塵も見せないまま少しの紫煙を吐き出して。





「――逆に聞くが、深津左衛門を殺したとしててめェは何を失うんだ」



･･また難しい問いを、私にぶつけた。




(･････失う、もの･･･。)




――そんなもの沢山あります、と答えようとして息を吸ったけど･･、････もう少しのところで、それは声にならず。･･･何故なら、思い浮かばないから。




･･父のことは、立派な人だと思っていた。私にも良くしてくれていると思っていた。威厳のある父だと、正しい人だと思っていた。――それは事実だ。･･でも。





･･･････でもそれは、全て過去のことであって。父についての良い思い出は、全て過去形であって。


今父に対して何を思うかといえば、“人を陥れる人間”くらいだ。生きていて価値があるとは思えない、と先程も思ったか。





――そんな父を、私が殺したとして。･･失うもの、とは。


偉大で正しい父などとうの昔に失った。･･否、端から存在していなかった。惜しむほどの思い出なんてものも、ないし。




「――――･･失うもの、は」



――なんて、私は言葉を紡ぎ。





「･････ありません、ね」


･･そんなもの、なかった。････背負う咎が、増えるだけ。･･つまり。



「――私は、自分本位に――･･、････背負うものを増やしたくないだけ、なのかもしれません」



口先ではなんでもないようなことを言いながら、自分だけは綺麗な人間でいたいと･･――思ってしまったのかもしれない。

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