部屋の中 ページ48
(・・――まぁ、でも。)
・・・・道理といえば道理かもしれない。だって、折れた道具は捨てられるのだ。――それだけのことだ。
――と、不意に昼間の光景が脳裏に蘇って。
・・屋根の上でのやり取りと、船の上で向けられた切っ先。――高杉さんは、昔の仲間を斬ると言った。・・・迷いなく、そう言っていた。
(・・・私は――・・、)
・・私は、どうだろうか。・・・・父を斬ると、迷いなく言えるだろうか。
どこまでも自然に浮かんできた“父を斬る”というその言葉。ここ最近はずっと忘れていたような気がしていたのだけれど、どうやらそれは勘違いだったようで。
・・きっと意識していなかっただけで、少し前高杉さんに言われたそれはしっかりと私の中のどこかへ居座っていたのだろう。・・知らぬ、うちに。
――いつの間にか、部屋の中は静寂と煙で包まれていた。高杉さんの色香にむせ返りそうな気さえしてくる。
私は用意されていたお猪口を二つ取り出してお酒を汲み。
その内一つを、ぐいと飲み干した。
「――高杉さん」
鼻から抜けるようなアルコールの匂い。それに背中を押されるかのように口を開いた私を高杉さんの片目が捉える。
どんな色を浮かべているのか全くわからないそれを見つめ返しつつ、私は言葉を続けた。
「・・高杉さんは、かつてのお仲間を斬ると仰いましたね」
唐突なそれに「あァ」なんて高杉さん。
「・・それがどうした」
もう一つのお猪口を片手にとって飲み干した彼に変化は見られない。相も変わらず上戸だななんて思いながら。
「・・・いえ。――・・ただ、少しだけ・・泣きたくなりはしませんか」
目を伏せて、私はそう言った。
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中村@受験終了!(プロフ) - えうさん» ご指摘ありがとうございます!完全に無意識で、冷や汗が流れました(;´д`)きっと知らせて頂けなかったらあのままだったと思います。本当に有難いです。 また何かやらかしてましたら、ご指摘頂けるととてもとても助かります。本当にありがとうございました! (2015年3月15日 10時) (レス) id: 0d3c6b7cce (このIDを非表示/違反報告)
えう(プロフ) - 『彼だからこそ』の回で夢主が高杉に対してご苦労様と言ってますがそれは自分より目下の人間に使う言葉なので不適切では? (2015年3月15日 5時) (レス) id: 18baf1cf97 (このIDを非表示/違反報告)
中村@3/11受験(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!私には勿体無さすぎるお言葉ばかりで、恐縮しきりです(;・∀・)でも本当に嬉しいです・・! 受験直前につき更新は亀の散歩以下のペースなのですが、出来る限りは頑張らせて頂きますので見捨てないで頂けたら幸いです(*^_^*) (2015年2月28日 10時) (レス) id: 0d3c6b7cce (このIDを非表示/違反報告)
メイビス(プロフ) - このお話、大好きです!!! 本物の小説のような書き方で夢小説ではないみたいです! これからも更新頑張ってください! (2015年2月27日 23時) (レス) id: aec4179d02 (このIDを非表示/違反報告)
ベリープリン(プロフ) - まさに文学って感じの世界観、大好きです!応援してます(。・ω・。) (2015年2月22日 19時) (レス) id: 73a7757a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年2月8日 22時