力が抜ける ページ46
―――――――
――ざくりざくりと、目の前で斬られていくものたち。・・とはいっても、私がそれらを斬っているわけではなくて。
「・・――強い」
一手交わえたいと、高杉さんの向こう側でそれ――一つ下の船で繰り広げられている斬り合いを見つめつつ、河上さんが呟いた。・・・そう、私たちが見ているのはそれだ。
船上で戦っているのは、桂小太郎という攘夷志士を捕らえるため駆けつけた春雨とそれに抗う桂小太郎、そして白夜叉。春雨の精鋭相手ではお侍様二人に不利かとも思ったけれど。
(・・・これは、むしろ・・、)
逆である。――彼らに有利だ。
次々に二人へ襲いかかる天人は銀色の刃で切り裂かれて断末魔を上げる。その流れるような動作は何か作り物を見ているのかと自身を錯覚させるくらいで。
「・・・これは春雨が苦汁を飲む結果になりそうでござるな」
サングラス越しでそれを見つめる河上さんが言った。・・そういえば、彼を見かけたことはあってもこうして顔を合わせたのは初めてだなとなんとなく思う。――まぁともかくだ。
何も言わずにそれを見つめる高杉さんに代わって「そうでしょうね」なんて返していると。
「――高杉ィィイイイイイ!!!」
目の前の船の二人組から発された、その声。・・こちらへ向けられた二つの切っ先が太陽によってきらんと光る。
・・――彼らが高杉さんに言葉を発して。
高杉さんが、ゆるく笑みを作りながらそれを聞き流して。
二人組が船の外へと飛び降りて。
高杉さんが吐き出した白が、青空へとけて。
――――そんな光景を、私はただぼんやりと眺めていた。
発された言葉に何を思うでもなく、あぁ彼らは敵同士となったのか、あぁ弄れた人たちだ、と。・・もう、この世の理の奇妙さに驚くほどの純粋さは持ち合わせていなかった。
高杉さんはもうこちらの手勢のいなくなった船へ大砲がいくつも打ち込まれるのを興味なさげに見つめて、・・数秒過ぎたのち。
「――祭りは終めェだ。・・一旦な」
・・・・視線の先を動かすことはなく、そう言った。
その言葉に河上さんは小さく頷き船内へ戻っていく。高杉さんは未だ船が沈むのを見つめていて。
・・・そして、私は。
(・・――終わ、った・・?)
すぅと体の力が抜けていくのを、どこかで感じたのだった。
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中村@受験終了!(プロフ) - えうさん» ご指摘ありがとうございます!完全に無意識で、冷や汗が流れました(;´д`)きっと知らせて頂けなかったらあのままだったと思います。本当に有難いです。 また何かやらかしてましたら、ご指摘頂けるととてもとても助かります。本当にありがとうございました! (2015年3月15日 10時) (レス) id: 0d3c6b7cce (このIDを非表示/違反報告)
えう(プロフ) - 『彼だからこそ』の回で夢主が高杉に対してご苦労様と言ってますがそれは自分より目下の人間に使う言葉なので不適切では? (2015年3月15日 5時) (レス) id: 18baf1cf97 (このIDを非表示/違反報告)
中村@3/11受験(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!私には勿体無さすぎるお言葉ばかりで、恐縮しきりです(;・∀・)でも本当に嬉しいです・・! 受験直前につき更新は亀の散歩以下のペースなのですが、出来る限りは頑張らせて頂きますので見捨てないで頂けたら幸いです(*^_^*) (2015年2月28日 10時) (レス) id: 0d3c6b7cce (このIDを非表示/違反報告)
メイビス(プロフ) - このお話、大好きです!!! 本物の小説のような書き方で夢小説ではないみたいです! これからも更新頑張ってください! (2015年2月27日 23時) (レス) id: aec4179d02 (このIDを非表示/違反報告)
ベリープリン(プロフ) - まさに文学って感じの世界観、大好きです!応援してます(。・ω・。) (2015年2月22日 19時) (レス) id: 73a7757a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年2月8日 22時