目眩 ページ37
「――お前らの目的は読めたァ!この娘っスね、なんやかんでこの娘を助けたいのは痛いほど分かってるっス!」
目の前に開けたそこ――甲板の上にてそう言った来島さん。船先には神楽さんが括りつけられていて。・・しかし。
・・どかん、と更に打ち込まれた砲弾から見るに、どうやら彼女は穏健派の彼らの仲間ではなさそうだった。
更にもう一発打ち込まれた砲弾に、私は少し思案する。
(・・――もし、私がここに残ったとして・・・)
きっと大して役には立てないだろう。ここには鬼兵隊の大部分が集まっているのだから。・・ならば。
(・・・・他の場所に行くのが賢明か。)
多分ここより手薄になっている場所はごまんとあるはずだ。大波乱に備えて幾隻か船も出しているし――・・敵が攻め入る場所ならば無限にある。そこへ行けば私でも多少は役に立つかもしれない。
そこまで決めたら、もう躊躇はせずに。・・私は先程流されてきた波をかき分けるようにして船内へ戻ったのだった。
*
――――――
「――――はぁ・・ッ」
――甲板から走り出して数分、船内にどかんと音が響く間隔が段々と狭まってきた頃。薄暗い曇天の下の私はというと、甲板の反対側・・船の後ろ側に追い詰められていた。
・・とは言っても、別に敵に囲まれたとかそういう訳じゃなく。――原因はその砲弾だ。
かなりの頻度で船体に打ち込まれているそれは船を落とす程の力こそないものの部分的に破壊する力はかなりものであって。・・簡単に言えば、船内に戻る通路が瓦礫で塞がってしまったのだ。
(・・・・・というか。)
・・一体どうしようか。戻るにも戻れず進むにも進めず、敵の大砲と睨み合い。・・なんてことだ、全く。
瓦礫と船のへりに挟まれて途方に暮れていると、敵の砲弾がまた船に打ち込まれて。・・その揺れの大きさに倒れ込んでしまった。
(・・・・いけない、これじゃ。)
このままここにいたら何もできない。何も出来ぬままこの瓦礫と同じ運命を辿ることとなってしまうかもしれない。――そんなのは御免被る。
「・・・ふぅー・・」
少しの勇気とともに船のへりから身を乗り出せばくらりと目眩がしたけれど・・、・・・十数メートル下に鬼兵隊の他の船が在るのも確かにわかり。
――――そして。
「――・・・ー・・ッ」
声にならない声とともに、ふわりと体が宙に浮いた。・・・端的に言えば私は、そこめがけて船から飛び降りたのだ。
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中村@受験終了!(プロフ) - えうさん» ご指摘ありがとうございます!完全に無意識で、冷や汗が流れました(;´д`)きっと知らせて頂けなかったらあのままだったと思います。本当に有難いです。 また何かやらかしてましたら、ご指摘頂けるととてもとても助かります。本当にありがとうございました! (2015年3月15日 10時) (レス) id: 0d3c6b7cce (このIDを非表示/違反報告)
えう(プロフ) - 『彼だからこそ』の回で夢主が高杉に対してご苦労様と言ってますがそれは自分より目下の人間に使う言葉なので不適切では? (2015年3月15日 5時) (レス) id: 18baf1cf97 (このIDを非表示/違反報告)
中村@3/11受験(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!私には勿体無さすぎるお言葉ばかりで、恐縮しきりです(;・∀・)でも本当に嬉しいです・・! 受験直前につき更新は亀の散歩以下のペースなのですが、出来る限りは頑張らせて頂きますので見捨てないで頂けたら幸いです(*^_^*) (2015年2月28日 10時) (レス) id: 0d3c6b7cce (このIDを非表示/違反報告)
メイビス(プロフ) - このお話、大好きです!!! 本物の小説のような書き方で夢小説ではないみたいです! これからも更新頑張ってください! (2015年2月27日 23時) (レス) id: aec4179d02 (このIDを非表示/違反報告)
ベリープリン(プロフ) - まさに文学って感じの世界観、大好きです!応援してます(。・ω・。) (2015年2月22日 19時) (レス) id: 73a7757a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年2月8日 22時