病室と末っ子 ページ28
使用人「英智様、A様の熱が上がっています」
英智「そっか今日は…」
英智が雨上がりの空を見上げると月がなかった。
英智「直ぐに病院を手配して」
零「A？」
英智「じゃあね。朔間くん」
零「オイ！待てよ！」
英智の乗った車は零を置いて走り去っていった。
ーーーーーーー
次にAが目を覚ますと、真っ白な天井が最初に視界に入った。
「…ここどこ」
英智「ここは病院だよ」
おはようA、とベッド横の椅子に座っていた英智が声をかける。
「なんで英にぃが？？」
英智「おや？昨日の記憶は無いみたいだね。路地裏で倒れているところを見つけたんだ」
「へっ？…あぁ私家出したんだった」
英智「何か嫌なことでもあったのかい？」
「…うん。私、天祥院に戻りたい。
どうして私を朔間に戻したの？」
英智「それは前にも話したけど蛍さんが亡くなった今、伯父様が再婚するには養子の君がいると少し分が悪いんだ」
「天祥院でも私は要らない子なんだね」
そんな事ないと言いたかったがぐっと堪えた英智。伯父が自ら悪者を買って出てくれたから。
英智「天祥院に戻れる方法なら一つだけあるよ」
「…ほんと？」
英智「Aが僕と結婚すればいいのさ」
「私と？英にぃが？？結婚？？？」
無い無いと笑うAに英智は頬に口付けをした。
「え、英にぃ？？」
英智「僕は本気だよ。君を天祥院に取り戻せるならどんな手だって使う。」
「…英にぃは英にぃだもん、ずっと私の中ではもう1人のお兄ちゃんだもん」
英智「直ぐに結論を出さなくてもいいよ。ゆっくり考えて。いつでも天祥院に戻れる事だけは覚えておいてね」
「……うん」
そう言って英智はAの頭を撫でた。
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作者名：杏 | 作成日時：2023年10月23日 19時
