失くしたものを、ずっと探し続けている。【鬼滅の刃】

215　『隻眼の理由』 ページ39

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　目覚めてから一週間──Aが記憶を取り戻す様子はない。



　記憶喪失というのはそう簡単に治るものではないというが、記憶を取り戻す為の切っ掛けも何もわからないのだからどうしようもない。せめて鬼の血鬼術等がわかっていれば、どうにかしようがあったかもしれないが。

　その為、とりあえずは彼女に『鬼殺隊』について話すことにした。むしろ今まで何故それを話さなかった、という話ではあるのだが──何となく、という理由でしかない。不死川の勘である。

　ちなみに、一度Aの見舞いに来ていたという冨岡は、それ以降一度も蝶屋敷に姿を見せてはいなかった──彼女にも訊いてみたが、それ以降は見かけていないという。何なんだアイツ。




「──で、それを狩る組織、つまり『鬼殺隊』に俺達は所属してた」

「────」

「信じられねェかもしれねェけど」




　記憶を全て失くした今、Aの鬼についての知識量は一般人と同程度だ。しかも自分のことすらわからないのだから、いきなり『鬼』と言われて困惑するなと言う方が無理であろう。

　実際、Aは激しく動揺していた。当たり前だ。平穏な生活だなんてとても言えないが、それでも今は庇護されて暮らしている処に、いきなり自分の命を脅かす存在のことを聞かされる。困惑は当たり前だし、恐怖を感じるのも当たり前。



「この、左眼も？」とAは恐る恐る訊く。不死川は言葉に詰まった。答えるかどうかを迷ったのではない、答えを迷ったのだ。

　不死川が知る限り、彼女は出会った時から左眼に包帯をしていた──その下は視力を失っているということを知ったのはそれより後の話だ。隻眼であるのだろうとおおよその予想はついていたが、意味もなく──というより目の怪我以外の理由で包帯を巻いていた可能性だって考えられる。


　いや、流石に違うか。……ならば鬼殺隊に入る前から隻眼だった、ということだ。それ以前は不死川はほとんど知らない。彼女の過去の詳細なんて全く訊かなかった。

　正直に「いや、それについては知らねェ」と答える。Aは目を伏せたまま「そっか」と言った。


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