俺には、お前の言うことが理解できねえよ。【鬼滅の刃】

132　『ねぇ待って』 ページ47

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「──行方不明？ ああ、隣町ね。怖いわよねぇ、最近そんなのばっかりじゃない」

「なんだ、たしかまだ年端も行かない子供の死体が見つかったとか」

「他には数人の行方不明だったかしらあ？ 何なのかしらねえ。それはさておき、おにーさん随分と」

「隣町へは、……ほら、あそこだ。あの山超えりゃあすぐだが、最近は雪がぶっ続けで降ってやがる。行くなら気を付けろ」




＋ ＋




　うん、とAはひとり頷いた。伊黒が心底鬱陶(うっとう)しそうな顔を向ける。



「お前独りで行ってこい」

「任務をサボったとして鴉に報告しておく」

「待って！ ねぇ待って！」



　本気で報告しそうだった伊黒にAが縋りついた。

　鎹鴉に報告されたら給金が減ること間違いなしである。前に冨岡と喧嘩しただけで一ヶ月給料ナシにまでさせられたので、そこらへんは割りと最近気遣っているのであった。それでも発言を正そうとはしないんだけれど。



　町の人達に聞き込みをしてわかったことは、どうやら鬼の出所(でどころ)は隣町だということだった。伊黒はAの言うことを信用したのが間違いだったと(Aがこの町だと言った)、手を頭に当てることで言外に示した。キレそうになった彼女は悪くない。ただ彼も悪くない。

　その隣町に行くには山を超えねばならない。大して高い山ではないが(どころか岳か？)、それでも山を登るのが不得手な彼女としては避けたい道であった。だがそちらに鬼がいるならばいかねばならないし、先程の伊黒の発言でもはや逃げ道がなくなったのは理解もしている。


　ここいらの土地はよく雪が降るらしく、最後に話を聞いた壮年の男性も気を付けた方が良いと言っていた。雪崩(なだれ)が起きるほどではないが、降り積もった雪のせいで転倒などが起き、軽い軽症者が毎年数人だけ出ているらしい。また崖などもあるとのこと。

　親切な男性に「何しに行くんだ、あんたら」と妙な目で見られ、用心棒として雇われましたと嘘を吐くのは幾らか心苦しかったが。まあこれも嘘同然だ。



　ちなみに用心棒だのと説明したのは、二人とも刀を隠すことをすっかり忘れていたからである。今の時代刀を持っていて見咎められる時と見咎められない時の差が激しくて、何かと困ってしまうものだ。


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