俺には、お前の言うことが理解できねえよ。【鬼滅の刃】

90　『酒々井隊士』 ページ5

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　隊士は酒々井(しすい)、と名乗った。階級は己(つちのと)。上から六番目、下から五番目の階級である。つまり極々平凡。呼吸の種類は水だ。




「実は……、その、お恥ずかしいことに、俺は鬼とは交戦していないんです」




　そう言った土方の額には包帯。腕は三角巾で吊るされていて、血の跡が少し滲んでいるのがわかる。どう見ても鬼と交戦した後の状態にしか見えないし、かなりの大怪我であることは確かだ。けれど彼は違うと言う。


　宇髄とAは顔を見合わせた。




＋ ＋




　何から話せばいいのかはわかんないんですが……、取り敢えず、俺は普通にこの近くを散策していたんです。

　近くに川があったじゃないですか、あの近くでですよ。そう、あそこです。その川沿いにある民家で子供が何人も──正確には、たしか、六人ですかね。六人の子供がいなくなっていたんです。……え、性別？ あぁ、それは特に法則はないようでした。子供という共通点だけですね。


　それで、近くの神社の中も立ち入ってみたんです。何を祀(まつ)ってあったのかは知りませんが。

　前に任務を受けた時、御社(おやしろ)の中に鬼が住み着いてたってことがあったんですよ……、だから今回ももしかしたらそうかもしれないって思って。


　それで、中を見たんです。まぁ、何もなかった──見えなかったんですが。見る暇もなかったとも言います。

　そうです、その扉を開いた直後に、俺は気を失いました。

　目が覚めた時には俺は腕が折れて、傷だらけになった状態で近くの木の幹に凭れかかってました。何が起きたんだか全くわかりません、本当に。





　俺に──俺の体に、一体何があったんでしょうか？





＋ ＋


　話を聞き終わった宇髄は腕を組み、唸った。唸る以外どうしろというのか。

　情報を欲しに此処へ来たというのに、むしろ不安になる要素しかない。己の隊士を一瞬で昏倒させるほどの鬼ともなれば、それは柱ですら危険視せねばならない強さだ。宇髄は自分の実力をそれほど信じている訳ではない。体に自信はあっても、刀の実力に自信はないのだ。


　こりゃあどうすっかな、と内心で息を吐いた彼の横で──ハッ、と嘲るような笑い声が聞こえた。



　──オイマジかよ、


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