俺には、お前の言うことが理解できねえよ。【鬼滅の刃】

105　『笑っているかわからないが、嗤っている』 ページ20

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　「鬼狩り、鬼狩りかな」と鬼から発された言葉に、Aは一切耳を傾けることなく宇髄に合図を送る。彼も勿論、鬼なんかの言うことに耳を傾ける気はサラサラ存在しなかった。



「宇髄、子供達を連れてってくれ」

「そりゃいいが、お前は」

「此処であいつを食い止める」



　宇髄は驚いてAを見るが、その表情は至って真剣だった。鞘からゆっくりと刀が抜かれていき、彼女の本気具合が窺える。しかしだからと言って、はいそうですかと彼女の言うことを了承する訳にもいかなかった。



「何言ってやがる。あいつ、かなり強ぇぞ」

「だからだよ。この子供達を此処に置いておいて、自分らは本気を出せるか？」



　ぐうの音も出ない反論である。いつものあの捻くれ理論は何処に行ったのかとすぐさま問い詰めたいぐらいのド正論。宇髄は思わず眉根が歪むのを抑えきれず、「じゃあお前がこいつらを」と言いかけた、が口を閉じる。


　案の定バカなのか？ とでも言いたげな顔を全力で作りましたみたいな表情。思わず隣の奴を全力で張り倒したい衝動に駆られるが、何とか全ての細胞を駆使してそれを止めた。

　流石のAでもこの年頃の子供五人を抱え、安全な処へ運ぶということはできない……、というかほとんどの隊士ができないだろう。

　柱でも可能なのは悲鳴嶼と宇髄くらいではないだろうか。筋力的には不死川もできそうだが、物理的にどうやって五人抱えるのかという問題が生じる。その点宇髄はマジデカなので問題なしである。




「何だよ……、何話してたんだよ。僕のことか？ やめろよ、やめろ……僕は何もしていないだろ、やめろ、そんな目でこっちを見ないでくれよ……！ こっちなんて見ないでくれ、僕のことなんか放っておいてくれ、僕はただあるがままに生きていたいだけなんだ。それでも僕を殺すっていうのか……？ やめろよ、やめろよ、どっか消えろよ──！」




　被害妄想が酷過ぎる系鬼のようなので、Aは流石に顔を引き攣らせた。

　宇髄もこれにはドン引きである。だがこれだけの好機(チャンス)、逃すはずもない。僅かに悲鳴をあげた子供達を全員抱え上げ、一般人の目からしたら消えたようにしか見えない速度で戦線を離脱。


　Aの口角はまた、無意識に上がっていた。


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