俺には、お前の言うことが理解できねえよ。【鬼滅の刃】

103　『ひとり』 ページ18

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　つまり彼女は、Aは、本気で神という人智を超えた存在以外に敬意を払う必要がないと思い込んでいたのだ。故に敬語も使わず、常に無礼な口調と内容で喋り続けて来た。本人にその自覚もなしに。

　マジかよ、ともう一度言葉が漏れた。

　親にどういう教育を施したのか問い詰めたいぐらいの気持ちである。否、彼女の口ぶりでは恐らくきちんとした教育は施されていたのだろうが、それを超えるのが『神への敬い』ということになるのだろう。……本気で笑うことしかできない、笑う以外にどうともできない。


　実際、宇髄の推測はほぼ現実と同じである──Aの母親、希子はきちんとした世の渡り方を彼女に教えていた訳ではないが(彼女自身が箱入り娘であり、そんなことを説ける立場の者ではなかった)、神という存在のその尊さは、幼き頃より教えていた。

　そののち盛大に教育を失敗した父親が何とか考えを矯正しようとするも、既に彼女の根底にはその思想が根付いてしまいあえなく失敗していった、という感じである。普通に普通の人生を過ごしていたならば大問題であったろうが、そこは流石政府非公認組織。



　たった今の今まで、彼女の異質さは表に出ることはなかったのだ。別の意味で特異であったので。



「──おい、お前。お前それは」

「────」



　宇髄がAに声を掛けるが、此方の動揺している宇髄と同じく、彼女の様子も何処か妙なことに気づいた。その表情は強張っており、顔色も悪い。ぎ、と彼女が奥歯を噛みしめるのがわかった。


　それからAは唐突として、その子供達を起こしにかかった。あまりにも速過ぎる行動だったので宇髄が止める暇もなかったぐらいである。おい、と大声を出しながら肩を揺さぶる彼女に、熟睡していた子供達の内一人が起きる。

　寝惚け眼のその子供があくびをするより早く、「もう一人！ もう一人いなかったか！？」と彼女はなかば怒鳴りつけるようにして訊いた。目覚めたばかりなのに、全くもって見知らぬ女にそんなことをされては堪ったものではない。その子供はびっくりしたように大きく目を見開くと、



「ふ、ぅ……、わぁあああん！」

「バカ野郎！ 泣いてる場合じゃねぇ、とっとと質問に」

「待てA！ 何だ、いきなりどうした！」



　切羽詰まった様子で怒鳴るAを、宇髄が肩に手を置きとめる。他の四人の子供達も起きて、「え？」「どこ、」などと戸惑いの声を出している。


　そのさなか、Aは、





「──ひとり、たりねぇ」





「────」


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