【stgr】潮鳴りのする雲を抜けて３【青井らだお】【完】

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「……らだおくんはアメリカ出身？」
「生まれは日本です。物心ついた時にはアメリカで」
「私は逆だな。親はアメリカ人だけど、もうずっと日本に住んでて、家でも日本語で会話してる。中学生の時に留学でこっちに来たのが初めて」


　もちろんロスサントスじゃないけどね、と彼女はいたずらっぽく笑った。おれも目を瞑って笑う。留学先にロスサントスを選ぶ学校があったら今すぐ廃校にしたほうがいい。まあ、たかだか留学程度で来られる街じゃないけど。
　映画はクライマックスを通りすぎ、主人公たちの後日譚にさしかかっていた。そのうちの一人――主人公の親友が、力強く画面に向かって言い切る。


『兄弟。人生で一番大事なことを知ってるか。ぼくはこの旅で学んだぜ』


　おれは彼女の横顔を見た。鼻の稜線がすっと伸びて、太陽よりもずっと弱々しい光が彼女の輪郭を曖昧にさせていた。金髪もじんわりと空気に溶けそうなくらいほのかで、軽すぎてすぐに絡まってクシが通らない、とひのらんと言い合っていた愚痴を思い出す。碧眼はおれのそれよりもずっと薄く、おれの好きな水色に似ていた。太陽に照らされて、こがね色に輝く砂浜。波の狭間は水色に透き通っている。


『アイラブユーを、きちんと伝えることなんだ』


　Aさんの肩を掴んで、ぽかんとした彼女の唇に自分のを重ねた。金色の細いまつげが揺れるくらい大きく震えて、彼女の手がおれの肩を押す。それを無視してキスを続けた。押しつけたAさんの唇はめちゃくちゃに柔らかくて、ほんのり苦い。たぶんリップの味。前に皇帝と一緒に化粧品を買いに行ったことがあるって聞いた。皇帝は男だけど話がわかるやつだ、なんて楽しそうにしてたのを思い出す。おれとAさんが付き合う前の話。


「ん、ふ」


　くそ。イライラしてきた。
　いったん唇を離して息継ぎをさせると、Aさんは暗がりでもわかるくらいめちゃくちゃ顔を真っ赤にさせていて、肩で息をしながら「き、きゅう、急に……！」と口を開く。文句を言われるより先にまた口付けてやる。

　さっきはこちらを向くように肩を押さえていたけれど、今度は後頭部と背中に手を回して逃げられないようにがっちりと固めた。おれとAさんの間にはほとんど隙間がなくなって、彼女は仕方なく回したおれの背中でさっきからバシバシとおれのことを叩いている。もちろん手加減してくれているとわかっていた。だから無防備に開いていた唇の隙間に舌をねじこんだ。


「ゃ、……！ んん゛っ、」
「ン」


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