「ひだまりの眼差し」 ページ45
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「皇帝が、Aさんの手料理を食べたことがあるって」
退勤した直後、警察署から出ていこうとしていた私の手を握って引き留めたらだおくんが言う。なんの脈絡もない言葉に記憶の糸をたぐり、ああ、と思いあたった。それがどうしたの、と訊ねようとすれば、彼が握る手が全く私を逃がす気のないことに気づく。
「おれも食べたいな」
「……えっと」閑散とした職場の中を見渡しても、私を助けてくれそうなひみつの道具は何もない。「あー……。ええと、いつ？」
「いまから」
離す気配など微塵も感じられなかった手が一瞬だけほどかれて、すぐに指先が絡まった。恋人つなぎ。びく、と手を引っ込めかけた私がそろそろと様子をうかがえば、表情の読み取れないヘルメット越しに「だめ？」と甘ったるい声がとどく。
だめじゃないです、と線香の火よりもか細い返事に、らだおくんは満足そうに頷いて「はやく行きましょう」と握った手を引っ張った。手袋越しでもわかる骨ばった男らしい手に、らだおくんってこんな感じだったっけ、と混乱しながらも大人しくついていったのだ。
＋ ＋
Aさんの家はちょうど街の市街地と高級住宅街との境あたりにあって、警官になる前から住んでたんだ、と彼女は言った。こじんまりとした外見と比べ中はわりと広く、室内は散らかった様子もない。ただ家に入った瞬間から、明らかに二十代の女の人のにおい(めちゃくちゃ変態くさいなこれ)がして、正直落ち着かなかった。抱きしめた時とかにほのかに感じるそれが充満しているように思う。
「ごめん。昨日の残りでもいい？」
「全然。急におしかけたのはおれなんで」
流石に今から食べるっていうのにヘルメットをしてたら行儀が悪いか、と思っていつものは傍らに置いてある。久々にクリアな視界でざっと部屋を見渡すと、Aさんらしい部屋だなと素直に思う。家具の色や雰囲気が統一されているのも几帳面な彼女らしいし、時計や棚がシンプルなデザインなのも想像通りだ。意外といえば大きなクマのぬいぐるみが我が物顔でおれの向かいの椅子に座っていることだった。だけどAさんは可愛いものを見たらオルカたちと一緒に走り回って喜ぶくらい可愛いところがあるし、別に衝撃ってほどでもない。
「家にひとりでいるのって寂しくない？」
おれがじっとそのクマを見つめていたことに気づいたのか、Aさんは不意にキッチンからそんな声を出した。寂しい、と言われても。そもそも家に帰ることがほとんどないから、どう返せばいいかわからない。
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白夜の世界(プロフ) - リアさん» コメントありがとうございます〜……！自分も書いてる最中に何度も泣いてます笑。自分が書いてるはずなんですが、私の中の彼らがめちゃくちゃ動き出してくれるんですよね……。えーんもう戻りたいですががんばります！ (4月23日 22時) (
レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ほんとに自分いい作品見つけたなって思います。読んでる途中泣くことも沢山ありました、それぐらい感情移入できる素晴らしい作品でした。これから1年間近く執筆されないということで、とても悲しいですが、リアルの方でもどうぞお元気で！いつでも帰ってきてくださいね (4月17日 2時) (レス) @page44 id: 8ac732f9cd (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - うさみさん» コメントありがとうございます〜〜！出来事があって、それに対してみんながどう考えてどう行動していくかがstgrの醍醐味だと思っているので、それを表現できて嬉しいです……！！みんなに幸せになってほしい本当に……。 (4月7日 16時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
うさみ(プロフ) - とても…とても素敵なお話でした……！！！心の動きが綺麗で読んでる私の胸もギューっと締め付けられました(；；)語彙力天才すぎます…！もう、何処がというか全部！好きです……！！読み返してきます！！！♡ (3月27日 21時) (レス) @page50 id: 5394e48d78 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - きなこもちさん» コメントありがとうございます私も常々悩んでおります……。エまじで自分の感情に気づく前の🟦ヤバすぎませんか……。たぶん薄々気づいてたんだろうけど気づかないふりをしてたんだろうなと思うともう、胸が……ウウ……。 (3月25日 12時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白夜の世界
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時：2024年2月10日 14時
