【stgr】潮鳴りのする雲を抜けて３【青井らだお】【完】

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　皇帝は今みたいにやらかしたり、けっこう危なっかしいこともあるけど、やる時はちゃんとやる。市民と積極的に交流したり、銃撃戦の時は誰よりも頼りになる。ドリーさんは普段めちゃくちゃしっかりしてて、事務仕事だって優先して引き受けてくれるけど、たまに変なところでツボに入って爆笑してたりする。対応の丁寧さで言えば署内随一を誇るだろう。

　と、そこでサイレンを鳴らしながら駐車場に入ってきたオレンジの派手なバイク。そのままガレージに停めて、そこから出てきたのはバイクと同じ色のキノコ頭だ。


「なにしてるんです？」
「まるんの悪口言ってた」
「えっ？ えっ……先輩三人で？ 怖すぎるこの職場。やめようかな」
「うそうそ！ 嘘だって」


　ふはは、と笑い声をあげる。まるんは「ああそうですよね」と言いながらも、ちょっとだけ疑わしそうな目をおれたちに向けていた。くくっ、と喉奥で噛み殺すように笑った皇帝も「違いますよね？」とまるんに訊ねられて、オウもちろん！ と元気よく返す。
　ちょうど事件対応の帰りだったようで、続々と駐車場に車が入ってくる。おれたちの笑い声だけだったのが一気に喧騒に包まれていった。警察署の中でもフォーマルな恰好をしている伊坂さんが、車をガレージに仕舞ってからこちらに近づいてきた。


「チルですか」
「チルっすね」


　楽しそうでよかったです、と笑う伊坂さん。でもこの人もAさんの手料理を食ったんだな、と思うと、なんかこう……なんかちょっと、あるな。ちょっと、若干、けっこう許せねえな。
　赤城さんやひのらん、オルカも姿を見せている。そこまではけっこう良かったけど、つぼ浦とキャップが視界の端に見えたのはヤバいなと思った。なにがって？ いろいろと。

　派手なステッカーの貼られた車から出てきたマンゴーは、「ウワ、けいさつおおっ」とぽろりと零していた。こうしてみると、確かにめちゃくちゃ多い。みんながそこかしこで好きな会話を始めるせいで声の種類が多すぎる。

　笑い声がする。怒号が飛ぶこともあるけど、すぐに噴き出して、そのまま爆笑へと変わっていく。

　いつも通りの光景。いつも通りの日常。


　──それにあなたがいないのは、きっと間違ってるんじゃないかって思うんだ。




　ネバーランドはさようなら
　・・(ゴーストは夜に泣く)



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