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あっという間に彼らの居場所はなくなって、警戒も段々と和らいでいた。多少なりとも警察と親交があるギャングも、もうすぐにこの街からは出ていくだろうと話してくれたから、気を緩めていた。……そうしていたのは私だけだった。ギャングが敵にしているのは、敵対組織だけじゃなくて、警察官もそうであることは当然なのに。
『警察署の駐車場にいた私とらだおくんに手榴弾を投げた』として、警察署襲撃の共犯を海外ギャング全員につけたことで、私たちが証拠不十分で捕らえられなかったやつも捕まえることに成功した。全員に前科がついてしまえば、白市民に対して手出しができない行政──市長も、他の白市民の安全を言い訳にしてありとあらゆる行為が許される。具体的には、国外追放が。
犯罪都市ロスサントスと呼ばれる街で、罪を償うことすら許されない行為の一つである、街への不法侵入(都市であることを鑑みれば、不法入都といったところか)。それを犯した者はもう二度とこの街に踏み入ることは許されないし、ロスサントスを利用して利益を被ることもまたない。
だけど、──だけど、らだおくんが私を庇って重傷を負ったという事実は、変わらない。
「正しくちゃ、だめですか?」
らだおくんは静かに訊ねた。彼の命を守ったと言っても過言ではない、トレードマークの青鬼のヘルメットはベッドサイドテーブルに置かれていた。欠けたツノがあの時の衝撃の大きさを物語っている。
私は膝の上で握り締めた手を見つめ続けていた。
彼の顔が見れない。合わせる顔なんてない、だって全部私のせいなんだから。だって正しいのは彼で、間違っているのは私なんだから。
「おれは……、こんなことを自分で言うのは、ちょっとアレですけど。正しいとまではいかなくても、間違ったことしたとは思ってないです。おれもAさんも、どっちも危なくて、おれが僅かでもAさんを助けられる可能性があったんだから」
「────」
「素直に喜んじゃ、だめですか。おれ……おれ、嬉しいですよ。傷なんてたいしたことない、そりゃ痛くない訳じゃないし、リハビリだって頑張らなきゃいけないけど、Aさんが無事なんです」
──好きなひと助けられて、おれはホントに嬉しいですよ。
「────」
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白夜の世界(プロフ) - リアさん» コメントありがとうございます〜……!自分も書いてる最中に何度も泣いてます笑。自分が書いてるはずなんですが、私の中の彼らがめちゃくちゃ動き出してくれるんですよね……。えーんもう戻りたいですががんばります! (4月23日 22時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ほんとに自分いい作品見つけたなって思います。読んでる途中泣くことも沢山ありました、それぐらい感情移入できる素晴らしい作品でした。これから1年間近く執筆されないということで、とても悲しいですが、リアルの方でもどうぞお元気で!いつでも帰ってきてくださいね (4月17日 2時) (レス) @page44 id: 8ac732f9cd (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - うさみさん» コメントありがとうございます〜〜!出来事があって、それに対してみんながどう考えてどう行動していくかがstgrの醍醐味だと思っているので、それを表現できて嬉しいです……!!みんなに幸せになってほしい本当に……。 (4月7日 16時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
うさみ(プロフ) - とても…とても素敵なお話でした……!!!心の動きが綺麗で読んでる私の胸もギューっと締め付けられました(;;)語彙力天才すぎます…!もう、何処がというか全部!好きです……!!読み返してきます!!!♡ (3月27日 21時) (レス) @page50 id: 5394e48d78 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - きなこもちさん» コメントありがとうございます私も常々悩んでおります……。エまじで自分の感情に気づく前の🟦ヤバすぎませんか……。たぶん薄々気づいてたんだろうけど気づかないふりをしてたんだろうなと思うともう、胸が……ウウ……。 (3月25日 12時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2024年2月10日 14時