【stgr】潮鳴りのする雲を抜けて３【青井らだお】【完】

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　ロスサントスという街は特殊だ。

　本来、ダウンという現象は、他の世界では発生しない──ロスサントスという、物理的に世界から隔絶されているこの街は、特有の現象がいくつかある。私たちはその現象が外の世界では起こりえないものだと知っているけれど、それを受け入れている。
　ただ、外の世界と同じことが起こる時もある。


「……Aさん」
「…………」
「……、怒ってますか？」


　ダウンという現象は、厳密にはロスサントスの街の中で、ロスサントス住民が、ロスサントスの中で造り出された武器によって、致命傷を負った場合に起こる。生命活動を一時的に停止させる延命処置、とでも言えばいいだろうか。死ぬ瞬間──厳密には死ぬ直前で体の状態を止めておき、ロスサントスの医療によって回復できるレベルを維持しておく。

　すべてはこの街の中で起こることだ。
　そしてその特殊な現象は、わずかでもその工程の中に綻びがあれば起こらない。


「──らだおくんは、正しいよ」
「────」
「らだおくんは、ずっと、正しいよ。警察としても、人間としても……隣で見てたから、知ってるよ」


　無防備な間抜け面を晒して立っていた私を、先に手榴弾の音に気付いたらだおくんが庇ったのは、確かに正しいことだ。私がらだおくんの立場だったら確かにそうするし、逆に彼が庇ってくれなければ私こそ致命傷を負っていたかもしれない。

　でも、それとこれとは、全然違う。
　結果としてらだおくんが入院するほどの重傷を負うのと、私ひとりが傷つくのとでは、ほんとに全く違うのだ。

　シーツの上にだらんと垂れているのは、包帯でぐるぐる巻きにされた彼の腕だ。手のひらにはアスファルトに擦れた時のついたささやかな傷がついていて、絆創膏がぺたりと貼られている。それは私の膝やすねにつけられたものと同じであるけれど、私よりもずっと数が多く、大きいものだ。

　ロスサントスに海外のギャングが侵入してきたのは、すこし前の話。署長からはダウンや相手への対応などの話が迅速に署員全員に伝えられており、街の空気全体がピリピリしていた。主に餡ブレラとMOZUが抗争という形で海外ギャングに対しての牽制を行っていた。麻薬の取り締まりも強化して、海外ギャングに金が行き渡らないよう警察も動いた。


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