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「皇帝とは話しましたか」
「……すこし。……戻ってきてくれてよかった、て、言われた」
「皇帝の言いそうなことですね」


 私を見た瞬間に、ぐっと唇を噛み締めた皇帝くんは、きっと彼の生涯でそう何度もないだろう表情をしていた。薄く開いた口をまた閉じて、深く息を吸い込み、ただ頭を下げた皇帝くん。『ありがとうございます』といわれた言葉を、私はうんと頷くだけで終えてしまった。
 ドリーくんは、らだおくんが私を好きだったと知っているのだろうか。……いや、知らないにせよ、こうしてわざとらしく質問しているのを見ると察していることには違いない。そう考えるとずいぶん意地悪な気がする。


「ドリー、くんは……」乾燥した唇を舐める。「どうすればいいとおもう?」
「──。やっぱりなにか言われたんですね」
「!」


 びく、と肩を跳ねさせる私にドリーくんが「はは」と笑う。Aさんが自分で気付くはずないですからね、とつけ加えられた言葉には流石に苦言を呈したくなったけれど。ねえ、そんな、そんな私って鈍感? 私が知らなかっただけ?

 ドリーくんは本気で知らなそうな表情で「それは、さあ。俺はなんとなく、そうじゃないかなってレベルでしたから」と答える。そう。そうかー。そうかあー……。


「まあ、なんにせよ……。俺はそれに関与するべきじゃないし、Aさん以外の人が答えを出せるはずもないですから」


 う、うう。ドリーくんの正論パンチだ。ドリパン、めちゃくちゃ心に来る。
 胸を押さえる私を見て、ドリーくんが「俺はむしろ」と正面を向く。彼と同じように視線を前にやれば、和気藹々というには殺伐で、侃々諤々というにはゆるい光景が広がっている。道路の向こう側には真っ青の蒼穹がひろがっていて、雲の旗手がたなびいている。


「Aさんは、ナツメさんのことが好きなんだと思っていました」
「……う、うーん。それは、そうだけど、ちょっと違うなぁ。ナツメのことはホントに大好きだったけど、恋愛対象として見たことはなかったかな」
「ああ……、なるほど?」


 ドリーくんは手に持っていたコーラの蓋をプシュ、と開けてペットボトルをさかさまにしながらごくごくと飲む。


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・→←23 『フラスト・パンザマスト』



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白夜の世界(プロフ) - リアさん» コメントありがとうございます〜……!自分も書いてる最中に何度も泣いてます笑。自分が書いてるはずなんですが、私の中の彼らがめちゃくちゃ動き出してくれるんですよね……。えーんもう戻りたいですががんばります! (4月23日 22時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ほんとに自分いい作品見つけたなって思います。読んでる途中泣くことも沢山ありました、それぐらい感情移入できる素晴らしい作品でした。これから1年間近く執筆されないということで、とても悲しいですが、リアルの方でもどうぞお元気で!いつでも帰ってきてくださいね (4月17日 2時) (レス) @page44 id: 8ac732f9cd (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - うさみさん» コメントありがとうございます〜〜!出来事があって、それに対してみんながどう考えてどう行動していくかがstgrの醍醐味だと思っているので、それを表現できて嬉しいです……!!みんなに幸せになってほしい本当に……。 (4月7日 16時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
うさみ(プロフ) - とても…とても素敵なお話でした……!!!心の動きが綺麗で読んでる私の胸もギューっと締め付けられました(;;)語彙力天才すぎます…!もう、何処がというか全部!好きです……!!読み返してきます!!!♡ (3月27日 21時) (レス) @page50 id: 5394e48d78 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - きなこもちさん» コメントありがとうございます私も常々悩んでおります……。エまじで自分の感情に気づく前の🟦ヤバすぎませんか……。たぶん薄々気づいてたんだろうけど気づかないふりをしてたんだろうなと思うともう、胸が……ウウ……。 (3月25日 12時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2024年2月10日 14時

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