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相手の名前を呟いた瞬間、そこから飛来した銃弾が確かにナツメの心臓を貫通する。内臓をねじ切られるような痛みに一瞬意識が遠くなって、身体と魂の間に薄い膜が入るような感覚を覚える。──ダウンした、もうこれで指先一つも動かない。目だけがかろうじて自由を守っている。
仰向けに倒れたから、ビルの側面に反射した光がよく当たる。まぶしいくらいの輝きに、すうと目を細めた。
遠く、視界の小さな場所で、Aがさっと身を翻したのが見えた。それを迎えるように高度を下げたヘリの中に乗り込む。それ以上はもう見えない。
「……あー、よかった」
ずくずくと痛む傷を誤魔化すように、ナツメは呟いた。
──よかった。ホントによかった。ぼくのこと、ちゃんと撃てるんだ。チヨの時はあんなに泣いてたのにさあ、……いや、もう時間も経ったからかぁ。
「A、がんばってたなあ」
それを褒めるのは自分の役目だったのになあ。彼女を後ろに乗せるのは、確かにナツメの役目だったのに。いつの間にかそこから遠ざかってしまって、そうして結局、二度とそんな機会は訪れなくなってしまった。
目を閉じる。脳裏に焼きつくのは、輝き続ける金髪。
声をかけると、その金髪がふわりと揺れて、もっときらきらした笑顔が見れるのが好きだった。最高の相棒だった。本当に、人生で、一番の。
「──あーあ、悔しいなあ! やっぱりAはすごいな、……くやしいな、」
ねえ、こんなこともう思わないから。
ぼくにそんなこと思う権利はないって、もう知ってるから。
「……A、泣いたのかなあ……」
ほんのちょっとだけ、今だけ、後悔してもいいかな。
「…………あーあ……」
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白夜の世界(プロフ) - リアさん» コメントありがとうございます〜……!自分も書いてる最中に何度も泣いてます笑。自分が書いてるはずなんですが、私の中の彼らがめちゃくちゃ動き出してくれるんですよね……。えーんもう戻りたいですががんばります! (4月23日 22時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ほんとに自分いい作品見つけたなって思います。読んでる途中泣くことも沢山ありました、それぐらい感情移入できる素晴らしい作品でした。これから1年間近く執筆されないということで、とても悲しいですが、リアルの方でもどうぞお元気で!いつでも帰ってきてくださいね (4月17日 2時) (レス) @page44 id: 8ac732f9cd (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - うさみさん» コメントありがとうございます〜〜!出来事があって、それに対してみんながどう考えてどう行動していくかがstgrの醍醐味だと思っているので、それを表現できて嬉しいです……!!みんなに幸せになってほしい本当に……。 (4月7日 16時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
うさみ(プロフ) - とても…とても素敵なお話でした……!!!心の動きが綺麗で読んでる私の胸もギューっと締め付けられました(;;)語彙力天才すぎます…!もう、何処がというか全部!好きです……!!読み返してきます!!!♡ (3月27日 21時) (レス) @page50 id: 5394e48d78 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - きなこもちさん» コメントありがとうございます私も常々悩んでおります……。エまじで自分の感情に気づく前の🟦ヤバすぎませんか……。たぶん薄々気づいてたんだろうけど気づかないふりをしてたんだろうなと思うともう、胸が……ウウ……。 (3月25日 12時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2024年2月10日 14時