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 だって、ねえ、あんたおれたちがどれだけ心配してて、どれだけあんたに気を遣ってて、どんな思いをしてるかなんて知らないだろ。おれだってAさんの気持ち全部わかるわけじゃないけど、Aさんだってそうだろ。


「おれたちの……、ねえ、おれたちの気持ちはどうなるっていうんですか。あなたのこと尊敬して、あなたに戻ってきてほしくて、」
「知らない、って、言ってるじゃん!」声を張り上げるAさん。「なに!? ねえ! 誰の話してんの、それだれなの!?」
「────」


 息を呑むおれに、Aさんは座り込むのをやめて立ち上がる。おれよりずっと身長が低い癖に、フーッと荒く息をしながら強く睨み上げてくる。冗談で怒られることはあれど、ここまで激されたことなんかない。
 さっきまでの勢いを失って黙るおれの胸ぐらを、Aさんはぐっと掴んだ。咄嗟にその手首を掴んだけれど、普段とは段違いの力強さだった。


「だれ、誰だよ、尊敬してるって!? 私そんな人間じゃないって言ってるじゃん、そんな完璧超人なんているわけないじゃん!? 優しいって、ねえ、ヨウくんを撃てないことが優しさなの!? ヨウくんはもう、もうただのギャングなのに!!」

「────」


 泣きながら、おれのことを揺さぶる。為すがままにされているおれの胸元に、はらはらとAさんの涙が散っていく。

 ヨウさん。おれの先輩。そしてAさんの、はじめての後輩。
 ほとんどナツメさんとAさんしかいなかった頃の警察を、おれは知らない。ヨウさんが入った時、ふたりがどれだけ嬉しかったのか、おれは知らない。


「みんなの気持ちなんて知らないよ、じゃあ私の気持ちもわかってよ!! ナツメがいたから警察やってたの、ほんとは銃を撃つのも怖くて、誰かがいないとなんも行動できない無能で、痛いのもいや! 警察がたったひとり、大事な親友がたったひとりいなくなっただけでこんだけメンタルめちゃくちゃで、大事な後輩にあたり散らすくらい弱虫!」


 ぐい、ぐい、と揺さぶる。それが段々と弱々しくなっていく。おれはAさんの手に指をひっかけるだけで、ほとんど力を入れてなかった。

 喉が渇く。勝手にぺたりと張り付いて、声が出てこない。視界の下にある、この人に言うべきことがあるはずなのに。ぼろぼろと溢れるその涙を、おれは止めてやるべきなのに。


「A、さん、」


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白夜の世界(プロフ) - リアさん» コメントありがとうございます〜……!自分も書いてる最中に何度も泣いてます笑。自分が書いてるはずなんですが、私の中の彼らがめちゃくちゃ動き出してくれるんですよね……。えーんもう戻りたいですががんばります! (4月23日 22時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ほんとに自分いい作品見つけたなって思います。読んでる途中泣くことも沢山ありました、それぐらい感情移入できる素晴らしい作品でした。これから1年間近く執筆されないということで、とても悲しいですが、リアルの方でもどうぞお元気で!いつでも帰ってきてくださいね (4月17日 2時) (レス) @page44 id: 8ac732f9cd (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - うさみさん» コメントありがとうございます〜〜!出来事があって、それに対してみんながどう考えてどう行動していくかがstgrの醍醐味だと思っているので、それを表現できて嬉しいです……!!みんなに幸せになってほしい本当に……。 (4月7日 16時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
うさみ(プロフ) - とても…とても素敵なお話でした……!!!心の動きが綺麗で読んでる私の胸もギューっと締め付けられました(;;)語彙力天才すぎます…!もう、何処がというか全部!好きです……!!読み返してきます!!!♡ (3月27日 21時) (レス) @page50 id: 5394e48d78 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - きなこもちさん» コメントありがとうございます私も常々悩んでおります……。エまじで自分の感情に気づく前の🟦ヤバすぎませんか……。たぶん薄々気づいてたんだろうけど気づかないふりをしてたんだろうなと思うともう、胸が……ウウ……。 (3月25日 12時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2024年2月10日 14時

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