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 辞めるんだろうな、とは思っていた。だけど辞めないでほしいと思ってたのも本心だ。おれと一番近く接してくれていた先輩。警察でやるべきことを、警察としての志を教えてくれた、一番の先輩。
 これはこれで、別にいいよ。おれは別にいいよ。ナツメさんが選んだ道なら、警察だって犯罪者だって、どっちでもいい。この街で会えることには変わりないし、敵同士だったとしてもきっと楽しい。ナツメさんがナツメさんとして変わらないなら、それで。

 けどAさんに何も言わないのは違うだろう。あの人がどれだけナツメさんのことを好きだったのか、あの人がどれだけナツメさんを誇りにしていたのか。──おれがあなたにどんだけ嫉妬していたか、知らないだろう。
 こういうのに心が動かないおれでさえなにかとその建物の様子を気にしているのだから、ずっとAさんを想っていた皇帝は気が気じゃないだろう。いつもAさんが出勤する時間になると目に見えてソワソワしだして、彼女が無線で挨拶したら被せぎみで『おはようございます!!』と叫ぶようなやつだ。


『──知らないところで傷ついてくれたほうが、よっぽど良い』
『────』
『最後に話すことなんて何もない。だってもう、ずっと喋ってきたもん。ぼくたちずっと一緒だったんだから。ぼくたち、……ぼくたちずっと、おんなじ方向を向いてたんだから』


 スマホから流れてくるのは、まるで子どものように投げやりな口調だった。お気に入りのおもちゃを、年を経たからといってわざと捨てようとする時みたいに。


『──ぼくだって、』


 屋上を風が通り抜けた。ナツメさんの手から離れた警察ヘリがカタカタと小さく振動する。──あの人がこれに乗ることは、もうない。

 運転席に乗るナツメさんと、後ろで金髪をはためかせて笑うAさんを見ることは、もうない。




『ぼくだって、Aといるのがずっと幸せだったよ』




「らだお?」
「────、っえ? あ、ああ。なんだ、皇帝かよ……」
「なんだってなんだ!? 失礼だなおまえほんと」


 駐車場から本署へ上がる階段のところで座り込み、ぼーっとホットドッグを食べているおれの前に、急に現れた皇帝。ガチの反射で出た声に笑いながらもツッコミを入れる。残りのホットドッグをばくんと一口で食べ、上げていたヘルメットを戻す。


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・→←19 『ネバーランドはさようなら』



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白夜の世界(プロフ) - リアさん» コメントありがとうございます〜……!自分も書いてる最中に何度も泣いてます笑。自分が書いてるはずなんですが、私の中の彼らがめちゃくちゃ動き出してくれるんですよね……。えーんもう戻りたいですががんばります! (4月23日 22時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ほんとに自分いい作品見つけたなって思います。読んでる途中泣くことも沢山ありました、それぐらい感情移入できる素晴らしい作品でした。これから1年間近く執筆されないということで、とても悲しいですが、リアルの方でもどうぞお元気で!いつでも帰ってきてくださいね (4月17日 2時) (レス) @page44 id: 8ac732f9cd (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - うさみさん» コメントありがとうございます〜〜!出来事があって、それに対してみんながどう考えてどう行動していくかがstgrの醍醐味だと思っているので、それを表現できて嬉しいです……!!みんなに幸せになってほしい本当に……。 (4月7日 16時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)
うさみ(プロフ) - とても…とても素敵なお話でした……!!!心の動きが綺麗で読んでる私の胸もギューっと締め付けられました(;;)語彙力天才すぎます…!もう、何処がというか全部!好きです……!!読み返してきます!!!♡ (3月27日 21時) (レス) @page50 id: 5394e48d78 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - きなこもちさん» コメントありがとうございます私も常々悩んでおります……。エまじで自分の感情に気づく前の🟦ヤバすぎませんか……。たぶん薄々気づいてたんだろうけど気づかないふりをしてたんだろうなと思うともう、胸が……ウウ……。 (3月25日 12時) (レス) id: 31a6bce1e5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2024年2月10日 14時

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