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忠について行くと、
日本酒の香りが鼻を掠め 男独特の低く野太い歌声が聞こえてきた
近付いていくたびに日本酒の香りは強く、歌声は大きくなっていった
酒蔵の入り口に着くと
忠が俺たちに向き直り、すこし声と胸を張ってこう言った
「ここが、うちの自慢の酒蔵です」
がらがら、と音をたてて勢いよく扉が開き更に強い酒の香りと歌声
男達の汗をかいて働く姿を五感で感じた
その姿には目を見張るものがあり、暫く目を離せなかった
忠に、奥へと案内されるとすれ違う男達から
酒蔵を案内する忠からこの店を、酒蔵を誇りに思っている事がひしひしと伝わった
花魁の二人はそれが少し羨ましく思えた
_____
酒蔵の見学も終わり
色々な種類の酒を味見させて貰う事になった二人
あの店に合う酒を見繕う為に、座敷料理の味を思い出していた
あの後も少しお話を聞かせて貰ったのだが
この店は相当有名な酒蔵らしい
そんな店で金を払わずして酒が飲めることを北さんに感謝していた
並べられた、三種類の酒
この中から選ばれるかもしれないし、選ばれないかもしれない
選ぶ方も選ばれる方も、少し緊張していた
「どうぞ、飲んでくださいまし」
忠の親父さんに声を掛けられると二人は
「いただきます」
と声を合わせた
形の良い唇に持っていかれたお猪口に注がれた酒をくい、と飲み干す
ごくり、と動く喉仏に色気を感じるのは流石、といった所だろうか
多数の視線が刺さる中、二人は目を見開いて
『美味い…』
と言葉をこぼした
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作者名:日紫喜 | 作成日時:2018年8月30日 14時