夢桜５* (ページ7)

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襖が開く。

「お嬢。起きてたの？」

「はい。和さんは・・・」

「和は仕事が忙しくて手が離せないらしくて」

「そうなんですか。それならやはりあたしが・・・」

立ち上がろうとするとめまいがする。

「お嬢は少し休むべきだ。俺が側にいるから」

「和さんに会いに行かないと・・・」

「今、お嬢に会う気分じゃないって」

孝之さんの冷たい声が胸に突き刺さる。

「・・・そうなんですね」

涙が零れそうになったが頑張って堪える。

「お嬢。強がらないでいいよ。」

孝之さんがあたしを優しく抱きしめてくれる。

孝之さんのぬくもりに包まれ、堪えていた涙が溢れる。

「辛いのにお嬢は何でも抱え込んでしまう。

甘えて良いよって言ったのに。俺達のこと信用できない？」

「・・・いえ。大切な人だからこそ甘えられないんです」

あたしがそう言うと孝之さんは、ふっと息をもらす。

「それは甘えて迷惑をかけたら俺達が離れて行っちゃうと思って？」

「幼い頃、母は、病死で父親は家を出て、あたしは両親ではない人に育てられました。

育てられた場所には、あたしと同じような境遇の人が多くいて、

どんなに甘えたくても迷惑をかけてはいけない、自立しないとって

いつも思っていました。迷惑をかけたら捨てられる。一人になってしまう。

そう思って・・・」

「俺達はお嬢から離れたりなんてしない。

嫌いなんかなったりしない。だから、たくさん甘えなよ。

大丈夫だから。ここにはお嬢のことを大切に思ってくれる人が

たくさんいる。だから強がらないで、甘えて良いんだよ」

「孝之さん。ありがとうございます」

こんなに優しい人たちに囲まれてあたしは幸せ者だ。

「俺だったら困らせていいよ」

甘い声で囁かれる。

「本当に・・・？」

「あぁ。もちろん」

孝之さんに優しく抱きしめられ、あたしは安心しきって

眠気におそわれた。

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