夢桜５* (ページ44)

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「ここで待っていたら、和達来るでしょう？」

楽しそうに言う信之。

まさか・・・

「和達が来る前に逃げるんじゃないのか？だから

俺はお嬢を連れてきて・・・」

「・・・この女がいたら、和達の壊れるところが見れるからだよ。

和達の壊れるところを見れるせっかくの機会なのに逃げるなんてできないよ。

和達を壊してから、逃げることにしよう。もう壊しきったら、

この女も用無しだ」

信之は笑う。冷酷な笑みを浮かべて。

「信之っ・・・」

俺は鞘に手をかける。

だが、刀を抜く前に信之の刀が俺の喉仏の前で止まる。

「・・・ねぇ、兄貴。俺に盾突いたら兄貴の大切な物

壊しちゃうよ？」

横目でお嬢を見る。

俺は仕方なく鞘から手を離して、手をあげる。

「約束だ。お嬢にだけは手を出すな。

お嬢に手を出さなければ俺も信之に手を出さない」

「理解力のある兄貴で助かるよ」

信之は、刀を下ろす。

「信之。もう一度考え直して。

俺と一緒に逃げよう。両親の仇はもう取っただろう。

信之が無くしたがっていた人斬り制度も無くなりつつある。

だから・・・」

信之は鞘で俺の腹を殴る。

俺はあまりの衝撃に倒れこむ。

「さっき理解力あるって言ったけど、やっぱりないみたい。

兄貴は黙ってそこで眠っていなよ」

冷酷な笑みを浮かべて言う信之の姿を見て

俺は意識が遠のいて行った。

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～和side～

A・・・。無事でいてくれ。

孝之さんの様子がおかしいことは気付いていた。

裏で白風と手を組んでいるんではないかと思っていた。

でも、気のせいだと思って孝之さんを信頼していた。

「・・・和。落ち着け」

翔は俺の前で立ち止まって言う。

郷までもう少しだ。城も見えている。

「どいてくれ。すぐに向かわないとAが」

「乱れた精神状態のまま向かっても、白風には勝てない。

平常心のお前なら勝てる。だから・・・」

「Aをさらわれて落ち着けって言うのかよ」

俺はそう言う。

翔はため息をつく。

「分かってる。俺だって落ち着けないよ。

でも、こういうときこそ落ち着かないと力が暴走して

しまうんだろう。暴走して周りが何も見えなくなって、

歯止めが利かなくなる。お嬢さんにそんなとこ見せていいのか」

翔が言う。

確かに、翔の言う通りだ。