夢桜５* (ページ37)

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「さて、お邪魔になっちゃうから俺たちは戻ろうか。孝之さん」

翔さんはニヤニヤしながらあたしを見る。

「そうだね。良い物見せてもらったし俺たちは大人しく部屋に帰ろう。

おやすみ。お嬢さん」

孝之さんもニヤニヤしながら翔さんと共に部屋を去って行った。

化粧を落とした和さんが部屋に戻ってくる。

「Aは部屋に帰らない？」

「どうしようかなぁと」

そう言うと和さんはあたしを抱きしめてそのまま褥に寝転がる。

褥は一つしか敷いていないため、密着して寝るしかない。

「夜は冷えるから一緒にいよ？それに、康則がまた来るかもしれないから

危ないし」

「・・・そうですね。失礼します」

「失礼されます」

ぎゅっと強く抱きしめられ、そのまま眠りについた。

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～孝之side～

朝日が眩しい。

そうか。もう朝になってしまったのか。

信之との計画のことが頭から離れなくて結局一睡もできなかった。

計画を実行するなら今晩しかない。

明日には、郷に帰ってしまうのだから。

体を起こし、朝の準備に取り掛かる。

和も翔もお嬢もまだ起きていないだろう。起きているのは従者ぐらいだ。

じっとしていられなかったため、武道場に向かう。

厨の前を通ると、だしの良い香りがしてくる。

喜助たちの作るごはんを食べられることも、もうないのか。

木刀を振り続ければ無心になれると思った。

俺が一緒に逃げようだなんて言ったからこんな結果になったのだ。

自分で言ったくせに自分を苦しめることになるなんてね。

信之と出会った瞬間、信之を助けたい一心で逃げようだなんて・・・。

和と翔とお嬢を裏切ることなんてしたくない。

でもただ黙って信之は散るところはみたくない。

それなら、共に散って最期まで一緒にいたい。

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