夢桜５* (ページ31)

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「二度と葵様に近付くな」

「覚えていろよ」

悪者の定番台詞を言い捨て逃げて行った。

「これは、夜這いにくるの確定だねぇ。

斬ったほうがいい？」

孝之さんはふふっと笑う。

「今から追って斬ってこようか？」

翔さんがさらりと怖い事をいう。

「斬らなくていい。やめろ。

俺自身のことを恐れさせたけど、葵のことはまだ恐れてないからね。

あいつは、葵の事をおしとやかな綺麗な女性と思い込んでいるから

いっそ怖い印象を植え付けてやらないと。」

ニヤリと笑う和さん。

康則さん・・・きっと夜這いに来たら怖い思いをすると思うので

来ないのが一番だと思います・・・。

心の中でそっと思った。

この三人を敵にしたら怖い以外の他の言葉はない。

「お嬢さんお嬢さん。昨夜の和はどうでした？」

ニヤニヤとしながら聞く翔さん。

「え？いや、別に・・・」

昨夜のことを思い出して恥ずかしくなる。

和さんも顔を赤くする。

「そんなことより、羊羹買ってきたんだ。

みんなで食べないか？」

「羊羹食べながら昨夜のお話でも」

孝之さんもニヤニヤしながら言ってくる。

「なっ・・・何もないですよ？」

動揺が隠せず声が上ずってしまう。

そして恥ずかしさんのあまり、和さんの後ろに隠れた。

「和は酔ったら口づけ魔でもあるし、久しぶりの二人きりの夜だし

さぞかし楽しかっただろうね」

翔さんはふふっと笑いながら和さんに言う。

「翔・・・。あの夜のことは忘れろ・・・。

それに昨夜は、俺が酔ったら口づけ魔とかそういうのじゃなくて

ただ単にしたいから口づけをしたんだ」

そう和さんが言うと、翔さんと孝之さんはニヤッとする。

「・・・和さん。自滅です」

後ろから和さんにそっと教えた。

翔さんと孝之さんの策にまんまと引っかかったのである。

「・・・お茶の準備をしてくる。後、これからの仕事についても

話したい。ここで待ってていてくれ」

咳払いをして、和さんはそう言った。

「了解」

“仕事”という言葉が出ると一気に翔さんと孝之さんは顔つきが変わる。

あたしも和さんについて、お茶の準備をした。