夢桜５* (ページ14)

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ふと目を覚ますと、書類に目を通す和さんの姿が見えた。

「和さん・・・。すみません。いつの間にか眠ってしまっていて」

「あぁ。大丈夫だよ。無理して起きなくていい」

「だいぶ良くなりました」

あたしは体を起こす。

「お茶淹れてきますね」

立ち上がろうとすると、和さんに袖を引っ張られる。

「そんな俺に気を遣わなくていい。これから、俺は

Aの殿方になるのだから」

そう言われてボッと一気に顔が赤くなる。

「それなら尚更、気を遣わなくては」

「体調が万全ではない中で無理をされたら困る。

これからは、Aだけの体じゃなくなるのだから」

大体意味を察し、ますます顔が赤くなる。

「それは・・・つまり・・・」

「あぁ。いつかは世継ぎのことも考えなくては」

和さんはそう言うとスッと立ち上がる。

「ということで、俺がお茶を淹れてくる。

そこで待ってて。あと、まだ俺たちが夫婦になるということは

誰にも言わないように。落ち着いたらちゃんと式を挙げよう」

「・・・はい」

本当に結婚するのだと思うとにやけてしまう。

大好きな人と結婚して、大好きな人との子を宿して・・・。

現代では考えられなかった幸せ。

「すごい口角が上がってるのは気のせい？」

孝之さんの声が聞こえて振り向く。

「いや、えっと・・・あの・・・」

「孝之さん。いきなり声かけるのはお嬢さんが

驚いちゃうでしょ？」

「だってお嬢の口角が異常に上がっているから・・・」

和さんの奥さんになるんですだなんて言えない。

「和さんと仲直りできて・・・その・・・」

「やっと見れた。その笑顔」

「え？」

孝之さんと翔さんは微笑む。

「最近ずっと難しい顔ばかりしてたからさ。

やっぱりお嬢さんには笑顔のが似合うよ」

「ありがとうございます」

「ちょーっと俺の奥方に何してんのー」

和さんの声。

「奥方？」

和さんのしまったという顔。あたしの顔を見て

申し訳なさそうな顔をする。

和さんったらほんとお茶目だ・・・。

そういうところも可愛いと思ってしまう。

あたしはどこまでも和さんにべた惚れらしい。