１０１ ページ4
一度、二度と、袖で涙をふく。
そして顔を上げた。
集まった刀剣男士の中から、堀川を探し出し、呼ぶ。
「堀川」
「はい」
唐突に呼ばれた堀川が、驚きの表情で返事をした。
「前聞いたな、私が『人間』にならない方が、良かったかと。今、答えるよ」
「は、はい」
堀川が緊張した顔になる。
もう一度、涙を拭った。
涙とは、こんなに止まらないものなのかと、小説を思い出しながら思った。
「『良かった』よ。
お陰で、この半年近くが楽しかった。
きっとこれが『幸せ』なんだろう」
それを聞いた加州が、駆け寄ってきて、先ほどの三日月のように抱きしめた。
「主！！」
加州も、泣いていた。
行ってほしくない。
ここにいてほしい。
捨てないでほしい。
助けてくれたから。
信じられるから。
もっと一緒にいたいから。
大好きだから。
寂しいから。
様々な感情を感じ、Aは、抱きしめ返した。
「共にいられなくなり、すまないな」
「それは、主のせいじゃないじゃん。謝らないで」
「ありがとう」
「お礼を言うのは俺たちのほうだよ、主。
助けてくれて、ありがとう。
大切にしてくれて、ありがとう。
俺達のために頑張ってくれて、ありがとう。
……それと、ごめん。
主のこと、少し疑ってた。
あの時、主が演技をしてるってあいつに言われて、ちょっとだけ、疑った」
「いいんだ。私が、皆の期待に応えられず、演じていたのが悪いんだ。私こそ、すまなかった」
名残惜しい。
皆とやりたいことがある。
皆と食べたいものがある。
皆とできるようになりたいものがある。
たくさん、たくさん、たくさん……。
けど、今更『人間』らしくなるのは、小説じみていて、きっとこれも演技なのだろうと、Aは思う。
自覚のない演技ほど、質の悪いものはないだろう。
私は、最後まで人間には成れないのだ。
と、Aは思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 934人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あき(プロフ) - 華音さん» こんにちは。ありがとうございます！とっても嬉しいです。修正したいのですが、時間があまりとれないので、どこがどう間違っているのかも一緒にお伝えしていただきたいです(^^;)読みづらかったとは思いますが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました！ (2021年9月16日 12時) (
レス) id: aa37dea49f (このIDを非表示/違反報告)
華音(プロフ) - こんばんわ☆初めまして！面白くて感情移入しながら一気読みしてしまいました（＾ν＾）ただ、所々ですが誤字脱字や一文字抜けている部分がございましたので見直してみて下さいね。 (2021年9月13日 22時) (レス) id: 85eea2d6ee (このIDを非表示/違反報告)
葉月(プロフ) - 一気読みしました！最後の最後に感情を取り戻した呪術師審神者は幸せに暮らせてるといいですね！ (2020年2月5日 17時) (レス) id: b5fce10f2a (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 架音さん» いえいえ。今まで読んでいただき、ありがとうございました。 (2019年9月15日 10時) (レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
架音(プロフ) - 遅くなってしまってすみません。最終話まで読ませていただきました。とても感動しました！素敵な作品をありがとうございました！更新お疲れ様でした。 (2019年9月14日 22時) (レス) id: 28682758c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あき | 作者ホームページ：
作成日時：2019年4月23日 22時
